働き方が多様化するなか、「定年=引退」というモデルは過去のものとなりつつある。では、65歳以降、豊かに暮らすにはどうすればいいのか。そして、定年後の仕事にはどんな選択肢があるのか。本記事では『月10万円稼いで豊かに暮らす 定年後の仕事図鑑』の著者・坂本貴志氏にインタビューを実施。仕事の実態を、就業データと当事者の声をもとに紐解いてもらった。今回は、「定年後の仕事はAIに代替されるのか」について聞いた。(構成・聞き手/ダイヤモンド社書籍編集局、小川晶子)

定年後の仕事はAIに奪われる? 奪われない? 専門家が解説Photo: Adobe Stock

20年後もシニアの仕事はあるのか?

――現代は、60代後半から70代の方々も多くの人が何かしらの仕事をしています。人手不足なこともあり働き口は多く、「年齢不問」「シニア歓迎」の求人もよく見かけます。ただ、今後はAIの台頭や自動化によって働き口が減るのではないかという懸念があります。いま50代くらいの人は、定年後も仕事を見つけられるのだろうか?と不安があるかもしれません。

坂本貴志氏(以下、坂本):いま米国ではAIの発展によって仕事が代替され、とくに若い人の雇用情勢が悪化していることが話題になっています。科学技術の発展で仕事が代替されるのは、過去もあったと思いますし今後もあるでしょう。

米国や欧州では今後「AIやロボットに仕事が奪われる」ということが起きると思われます。

一方で、日本においては人手不足であり、今後も労働人口が減っていくことがわかっています。さらに高齢化が進み、若い人が少なくなるんです。

ですから、仕事が減るのが早いか、働き手が減るのが早いかという話になりますよね。AI、ロボットによる自動化の波のスピードよりも、働き手が減るスピードのほうが速いのではないかと思います。

幸か不幸か、日本全体では「AIやロボットに仕事が奪われる」ことがあまり大きな問題にならないと予測されるのです。もちろん個別に見れば、仕事の内容が大きく変化したり、代替される職種があったりするとは思います。でも、少なくとも今後20~30年については「仕事がなくなる」という心配はしなくていいと思いますね。

定年後の仕事はAI・ロボットに代替されにくい

――現役時代はホワイトカラーとして働いてきた方も、定年後はどちらかというと体を使う仕事に就く割合が多いそうですね。『定年後の仕事図鑑』には高齢になってから始めやすい仕事がさまざま載っていますが、適度に体を使う仕事も多く、AIに代替されにくいようにも思います。たとえば、「介護・保健医療サービス」において看護助手としてサポートをするとか、公園や駐輪場、公共施設などの管理人のお仕事、学童保育指導員として子どもとかかわるお仕事など……。

坂本:そうですね。昨今急速に発展しているAIは、情報を整理したり頭を使ったりする仕事については得意ですから、最も影響が大きいのはやはりホワイトカラーでしょう。一方、体を動かす現場の仕事に関しては、ロボットやセンサーが必要になりますが、現在の技術ではまだ動作が難しかったり、コスト面で導入が難しかったりします。体を動かす仕事が短期間で代替されていくとは考えにくいですね。

――いま40代50代の方々が高齢期になったときも、働き口の状況はそれほど大きく変わらないのではないでしょうか。

特別なスキルがなくても大丈夫

坂本:高齢期に働くには特別なスキルが必要なのではないかという声をよく聞きます。もちろんスキルのある方はそれを活かして仕事をされるのも良いと思いますが、それに捉われる必要もないんですよね。本書で紹介している100の仕事は、特別なスキルがなくても、高齢期から始められる仕事です。「年を取ったら、自分ができる仕事はないのではないか」と心配しなくても大丈夫なのです。大事なのは健康、体力です。働く体力があり、仕事をしたいと思えば、定年後も働くことができると思いますから安心していただきたいですね。

(※この記事は『定年後の仕事図鑑』を元にした書き下ろしです)

坂本貴志(さかもと・たかし)
リクルートワークス研究所研究員・アナリスト
1985年生まれ。一橋大学国際・公共政策大学院公共経済専攻修了。厚生労働省にて社会保障制度の企画立案業務などに従事した後、内閣府で官庁エコノミストとして「経済財政白書」の執筆などを担当。その後三菱総合研究所エコノミストを経て、現職。研究領域はマクロ経済分析、労働経済、財政・社会保障。近年は高齢期の就労、賃金の動向などの研究テーマに取り組んでいる。著書に『月10万円稼いで豊かに暮らす 定年後の仕事図鑑』のほか、『ほんとうの定年後「小さな仕事」が日本社会を救う』『ほんとうの日本経済 データが示す「これから起こること」』(共に、講談社現代新書)などがある。