社労士の話を聞き、植田は有田の要求を認めざるを得ないと思った。

 植田は動揺を抑えられず、パニックに陥りながら、プロジェクトの進捗状況をメンバーに確認した。しかし、メンバーは有田から受けた作業内容の指示に関しては把握できたものの、実際にどの程度進んでいるのかがわからなかった。そこで植田は改めて有田のPCを確認すると、ほとんど進んでいないことが判明した。

 植田は真っ青になった。

「今の進捗状況では、取引先から言われている納期にはとても間に合わない」

 植田はすぐさま社長に状況報告すると、他のプロジェクトからメンバーを集め、緊急に対応することで納期に間に合わせるという方針が決まった。

社内チャットに
驚きの記録が…

 植田はその後も有田の携帯やメールに連絡を入れてみたが、全く返答がなかった。そこで、植田は有田と親しかった営業部の徳井に話を聞いてみた。

「徳井さん、有田さんの退職の件でちょっといいかな……」
「有田さん、やはり退職するんですか?」
「そうだ。徳井さん、有田さんが退職する話を知っていたのか?」
「ええ、ちらっとそんな話は……。でも、まさか本当に辞めるなんて……」

 などと、徳井は口ごもっている。

 植田は、有田と連絡が取れなくて困っていること、既に納期が遅れているプロジェクトが有田の退職で危機的な状況にあり、このままだと最悪の場合、多額の損害賠償を請求される可能性があることを話した。

 すると、徳井は「実は……」と言いにくそうに話し始めた。

「有田は、以前から社内チャットで仲のいい同期には、会社の愚痴をこぼしていたんですよ。でも、本当にこんな迷惑をかけて辞めるなんて……」

 植田はシステム担当者に頼んで社内チャットの履歴を見せてもらうと、こんな記録が残っていた。

こんなクソみたいな会社、いつでも辞めてやる。オレが辞めたら困るはず。部長がバカすぎてやってられない
大学の友だちが働いている会社から誘われている。給料も上がるし、そっちに行こうかな
とりあえず、今日も仕事したふりして、1日ゲーム。部長は全く干渉してこないから楽勝!