会計検査院の報告が国会に提出され、国が森友学園と売却契約を結んだ際の値引きの根拠が不十分であったと指摘されていた。近畿財務局と籠池氏のやり取りを記録した音声データも明らかになり、佐川長官に理財局長時代の虚偽答弁の疑いが浮上していた。ここで、安倍政権が「国有地売却は適正に行われていた」という見解を転換して、財務省の処分を断行することはできたはずだ。

 言い方は悪いが(「真実」を明らかにするということとは別次元で、「政治的」にこの問題を終息させるという意味で)、この時点で佐川長官を「切り捨てて」いればよかった。そうすれば、安倍政権は無傷とはいかなくても、「財務省による決裁文書書き換え」という、政権の命運にかかわるだけでなく、議会制民主主義の根幹にかかわる深刻な事態に至ることはなかっただろう。

なぜ安倍政権は森友問題に
頑なな対応をして傷を広げたのか

 筆者は、森友学園問題は、政治スキャンダルとしては、至ってシンプルな問題だと言い続けてきた(第152回)。森友学園理事長の籠池氏が、新たに小学校開設のために政治家や近畿財務局に接触した。話は次々と回され、財務省理財局長に届けられた。ここまでは、よくある「陳情」である。理財局長が国有地売却を決定すること自体も、違法性はない。

 突き詰めると、問題は「ごみ撤去費8億2000万円を差し引いた1億3400万円、10年の分割払いでの土地の売却」という財務省理財局の決定が適切だったかということだ。そして、そこに財務省の安倍首相に対する「忖度」があったのか、さらに言えば、安倍首相夫妻の直接的な関与があったのかに絞られる。

 換言すれば、これまで日本政治に起こってきたさまざまなスキャンダルのような、さまざまな政治家が「カネをもらった」ことが芋づる式に発覚するような複雑な問題ではない。そして、「カネをもらった」ケースでさえ、政治家の関与がどれだけ意思決定に影響したのかの証明は難しかったのだ。

 翻って森友学園問題では、安倍首相が学園に寄付という形で「カネをあげた」ということになっている。これは公職選挙法上、全く違法ではない。首相や首相夫人の関与との因果関係の証明は、野党や朝日新聞がどれだけ批判し続けようとも、ほとんど無理だと言ってもいいだろう。