また、かつて大蔵省改革を主導したはずの菅首相が、財務省寄りに変わり、財務省が目指す消費増税の実現に動いた。官僚と対立的だった民主党政権は、政権運営に行き詰まると、「最強の官庁」財務省と協力関係を築くことで事態を打開しようとした(第37回)。

 このように、政治は何度も財務省(大蔵省)主計局の予算編成権を掌握しようと動いたが、「最強の官庁」財務省の牙城を崩すには至らなかった。その財務省が、安倍首相に「忖度」し、森友学園に国有地を破格で売却し、果ては禁じ手の公文書の書き換えまで行ったことに焦点を当てなければならない。第二次安倍政権は、歴代政権のように予算編成権そのものに手を付けようとはしなかったが、実質的に財務省を抑え込むことに成功していたのである。

財務省を完全に抑え込むことで
「アベノミクス」を実行できた

 第二次安倍政権は、発足と同時に新しい経済政策「アベノミクス」を打ち出した。「3本の矢」からなるアベノミクスは当初、画期的な経済政策だと狂騒になった。だが、この連載では、アベノミクスの実態は、従来型と変わらないバラマキを異次元の規模で行い、斜陽産業を延命させるものでしかないと批判してきた(第163回)。

 規模は異次元だが、所詮従来型のバラマキに過ぎないのだから、経済を成長させる新しい産業を生むことはないからだ。実際、異次元金融緩和の「黒田バズーカ1」が打ち出された後は、カネが切れるたびに「黒田バズーカ2」、そして「マイナス金利」と新しいバラマキ策が繰り出された。古い日本経済の構造を維持するために「カネが切れたら、またカネがいる」の繰り返しとなったのは明らかだ。
 
 異次元で「カネがいる」となれば、当然、安倍政権が財務省主計局の予算編成権を掌握する必要があった。首相が発足直後の内閣・党役員人事でまず行ったことは、財務省と協力して、消費増税を含む「社会保障と税の一体改革」の「三党合意」に動いた政治家を経済政策の意思決定から排除することであった。一方、官邸には、これまで経済学ではマイナーな存在に過ぎなかった「リフレ派」や、「国土強靭化」の推進を主張するブレーンが集められた(第51回)。

 消費増税は、2014年4月の5%から8%は実行された。だが、10%への増税は2度延期された。延期の際には、ノーベル経済学賞受賞者が官邸に集められ、彼らの話の「いいとこ取り」で、増税延期とバラマキ継続が正当化された(第133回)。