独立系の投資顧問会社・AIJ投資顧問株式会社が、主として国内の企業年金からの投資一任契約に基づいて預かっていた約2000億円の約9割を失ったと報じられている。この問題については、今後実態の解明が進むに従って、様々な論点が出てくると思われる。
同社の運用実態が本当にそういう結果に終わっており、しかもそれについてのこれまでの開示が虚偽であったとすれば、言語道断であり、厳しく断罪されるべきものだ。しかし、それでもなお、筆者は現時点での新聞報道のトーンには強い違和感を持つので、敢えてこの件についての見解を述べさせて戴きたい。
新聞各紙の報道の特徴
筆者がこれまで見た限りでは、新聞各紙の報道トーンは、おおよそ2月25日付日本経済新聞の社説の線で一致している。
「……投資顧問業を育成する立場から、監督や情報開示の制度も再点検すべきだ。今回の年金消失の問題は、AIJだけでなく投資顧問業全体の不透明な側面を浮かび上がらせたからだ。投資顧問業は当局が免許を与える銀行とは異なり、原則として参入が自由な登録制をとる……」
日経の社説は、この後、参入規制を緩めて情報開示や検査を厳しくするというこれまでの行政の方向を一応是認し、情報開示や検査を強化すべきという議論を展開するのだが、右に引用した部分の行間に滲むのは、わざわざ銀行と比較していることからも、過去の免許制から登録制への規制緩和の是非をも問うものであろう。
事実、同日の日経新聞の報道によれば、民主党は3月1日に「年金の運用管理に関するワーキングチーム(仮称)」を立ち上げる方針であり、そのワーキングチームは、「投資顧問会社が以前は認可制だったが、規制の緩和で登録制になった点に注目している」という。