従来の農村のイメージを超越した
「家庭農園」を設立

 上海には、横沙島という小さな島がある。長江の入海口にある離島で、上海最後の漁村がある島として知られる。1987年生まれの〓(龍の下に共)夏燕さんは、その島の出身だ。

 彼女はこれまで、村の役人や電子商取引、旅行取次などの職に就いたことがあり、平日は都会で働き、週末は田舎に帰るという生活を送っていた経験もある。往復100キロメートルにわたる移動は、彼女にとって苦ではなく、帰省したような気分に浸っていたという。やがて、毎週往復するくらいなら、いっそ都会の喧騒から離れたほうがいいのではと思うようになり、思い切って花や自然との暮らしを選んだ。

 夏燕さんは、2016年に訪れた台湾のラベンダー農園で、その経営モデルに大きな衝撃を受けた。そこで、クリエイティビティと農業製品の融合、伝統文化の伝承とイノベーションの融合、そしてブランドコンセプトを打ち立てたマーケティング戦略などを学んだ。その結果、忙しい都会人が、従来の農村のイメージを超越した新しいライフスタイルを体験できる「家庭農園」の設立を決意する。

 当初、彼女と仲間たちは、“グリーンパラダイス”といった意味の「横沙草坪楽園」を立ち上げ、サバイバルゲーム、バーベキュー、魚釣り、屋外カラオケといったアクティビティーで都会からの客を受け入れた。

 草坪楽園経営の稼ぎや、クラウドファンディングで集めた資金を手掛かりに、夏燕さんは自らの家を民宿に改造することにした。97年に建てられた建物だったため、民宿は「九七民宿」と名づけられた。

 建物のリフォームは、空間デザインディレクターが手掛け、専門のマーケティングチームを招いて運営を行うことにした。2017年10月1日に仮営業をスタートし、2018年3月15日にグランドオープンした。