教育委員会の勧めもあり、9月には自宅から車で10分ほどの小規模校に転校したが、間もなく、音楽室で学習中に手足がマヒして動けなくなり、父が迎えに行く騒ぎになった。

 以来、その小規模校にもまったく行っていない。

 嗅覚過敏が進み、ほとんどのものに反応するようになった。自宅の周辺は柔軟剤などのニオイがいつも漂っていて、外出もできない。反応の出ないパジャマを一日中着て自室に閉じこもり、パソコンに向き合う日々がもう1年4ヵ月も続いている。

 国立病院機構高知病院で2005年からMCSの診察を続ける小倉英郎医師(現在は非常勤)はこう話す。

「統計はとっていないが、MCSを発症する子どもたちが増えている印象がある。保育園や学校に通うようになり、香りつきの合成洗剤や柔軟剤を使う家庭の子どもたちと接触したことがきっかけになる場合が多い。高知県には(南国市の岡豊小学校など)MCS児童のための特別支援学級を設けたところもあるが、全国ではまだ、不十分な対応しかしていない学校が多いと聞いている」

休学状態が続く高校生
制汗スプレーで発症

 中学、高校と学年が進むと、消臭除菌スプレーや制汗スプレーを使う生徒が増える。札幌市の高校2年マリさん(仮名、女性、17歳)は、その被害者の一人だ。

 マリさんは中学入学のころから、香水・洗剤・タバコ・排ガスなどが苦手になった。

 なんとか通学して卒業。私立高に進み、周囲で使用される制汗スプレーにさらされてから、頭痛・吐き気におそわれるようになった。次第に全身倦怠感・めまい・発熱・関節痛・食欲不振が加わり、通学が困難になった。