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クルマ社会アメリカで自家用車信仰が崩壊!?
カーシェアリング企業「ジップカー」急成長の理由

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第186回】 2012年3月7日
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 こんな手軽さが人気を呼んで、現在アメリカでの会員数は67万3000人。全米16都市に合計8900台のジップカーが配置されている。使いたい時に歩いて行ける距離にたいてい空きのジップカーがあるはずと、同社は自信を持って語っている。

 ジップカーが登場したことで、もう車を所有するのはやめようと決心した人々は少なくない。ガソリン代、メンテナンス費など、車を持つのにかかる諸々の費用を合わせると、ジップカーに乗り換えたことで月に500ドルは節約ができるという計算もあるほどだ。

 ひとりひとりが車を所有するような無駄を省いて、一定数の車をその都市の会員の間で使い回し、それをテクノロジーの力を借りてスムーズに実現する。一見、時間単位のレンタカーに見えて、ジップカーが本質的にはカーシェアリングとなっているのには、テクノロジーの適切な導入が大きく働いているのだ。

 ジップカーが創設されたのは2000年、ボストンでのこと。ヨーロッパでのカーシェアリングに倣ってサービスを開始したが、最初はまるで夢物語のようにしか受け止められず、利用者も増えなかった。

 資金も底をつくかと思われた2003年に、CEOとしてやってきたのは、テクノロジー業界で経験を積んだスコット・グリフィスだ。スマートフォンの普及、地図とデータのマッシュアップなど、その頃隆盛し始めたテクノロジーも大いなる追い風になった。もちろん、グリーンへの関心や原油高なども背景にある。レンタカーはもとより、自家用車よりも手軽なカーシェアリングに人々は注目し始め、利用はどんどん増えた。同社は2011年4月にIPOを果たし、今は市民権を得たサービスになっている。

 同社は、大学や企業向けに格安のサービスを提供しているほか、現在は引っ越しなどに使えるバンの導入もテスト中だ。

 ジップカーのテクノロジーを物語る、こんな事件もある。ある時、借り出された車が所定の駐車場に戻されなかった。最後に借り出した会員を捜すと、この人物は盗んだクレジットカードを利用し、偽のIDで登録していたことがわかり、正体がわからない。そこで、ジップカーではその車に信号を送ってイグニションを無効にした上、通信網上のシグナルをたどって車の位置を突き止めたのだ。車は、鉄道駅の駐車場に乗り捨てられていたという。

 アメリカ人の頑固な自家用車信仰へジャブ攻撃を続けるジップカー。これは、儲けを上げつつ社会を変える、21世紀型のビジネスである。


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瀧口範子
[ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。

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