製薬業界では、翌14年にも、武田製薬の降圧剤ブロプレスについて、データ改ざんとそれに基づく誇大広告が発覚。昨年4月にも、バイエル社の経口抗凝固薬イグザレルトに関して、製薬会社の社員による患者のカルテの不正閲覧とその“データ”に基づく医学論文の代筆などの問題が報道された。

 ライバル会社の先を越して、治験をクリアし商品化して利益を上げたい製薬会社と、研究費を獲得して“すぐれた成果”をあげたい研究者のそれぞれの思惑が重なって、健康や人命という最も大事なことが後ろに回される。

 これらの問題の背景には、自らが属する組織が当面取り組んでいる業務で“成果”を挙げることしか考えられなくなる近視眼性や、違う職場で働く同僚の過ちに気づいても見て見ぬふりをし、場合によっては“組織を守る”ため間接的に隠蔽に加担してしまう蛸壺的な体質があると思われる。

 このことは、大手メーカーの品質データなどの改ざんや財務省の公文書書き換えでも共通するように思う。

 ただ、さらに言えば、治療の基礎になる研究成果の捏造は、多くの被害者を生み出す危険がある。しかも、被害と思われる事例が報告されても、当該医薬品の副作用によるのか、病気自体に起因するのか判定しにくいことが多い。

 それを分かっている“プロ”が不正に手を染めるのは、かなり悪質と言える。

臨床研究法、4月施行
資金提供の情報公開などを規定

 こうした事態を受け、医薬品の臨床研究を規制する「臨床研究法」が昨年4月に制定され、今年4月から施行される。

 法律の第1条では、臨床研究の実施の手続きを定め、資金提供等に関する情報公開の制度を作ることで、被験者を始め国民一般の臨床研究に対する信頼を確保することが目的として謳われている。

 その中で、製薬会社から資金提供を受けたり、未承認の医薬品を研究したりする「特定臨床研究」の場合は、「実施計画」を厚生労働大臣に提出したうえで、「認定臨床研究審査委員会」に実施状況を報告して審査を受け、その意見を尊重しながら進めることが義務付けられた。

 さらに19条では、研究による健康被害の発生が予想される場合、厚生労働大臣が中止を命じるなど、必要な措置を取ることができると規定される。違反すれば、懲役刑を含む刑事罰が科せられることもある(19条違反の場合は、三年以下の懲役もしくは三百万円以下の罰金)。