これまでも薬機法で臨床試験に関する製薬会社の義務は規定されていたし、「臨床研究に関する倫理指針」をはじめ、人の生命に関わる研究については各種の指針が定められていたが、臨床研究のやり方を罰則込みで直接的に規制する法律はなかった。

 臨床研究法は、製薬会社と研究機関が臨床研究をめぐって本来は「利益相反関係」にあることを明確にし、それゆえに製薬会社による恣意的な介入を防ぐことに主眼があると見られる。

「利益相反」というのは、こういうことだ。

 大学病院など研究機関で行われる臨床試験は、製薬会社が生産しようとする医薬品の有効性や副作用を厳密に検証して安全性を確保し、臨床研究の対象者や潜在的な利用者である国民一般の利益に寄与することを本来の目的としているはずだ。

 しかし、研究を、当事者である製薬会社から資金提供を受けて行うと、研究費を継続的に得るため、患者よりも企業にとって都合の良い“結果”を出したくなる。そこに利益相反が生じるわけだ。

 どの業種でも新製品の開発には相当の人手と時間をかけるので、少々の欠陥には目を瞑って早く商品化したいと思う。製薬会社の場合、そこに薬機法に基づく新薬の承認や外部の研究機関による検証というさらなるハードルが加わる。

 ライバル会社より少しでも早く治験をクリアできるかに社運がかかってくるので、データ捏造への誘惑が生じやすい。半面、その分野の権威が在籍する有力な大学病院が事情を察して“黙認”してくれれば、不正は判明しにくい。

 薬が本当に効いているかどうか素人にはなかなか分からない。この点は、製品の品質がある程度素人である使用者にも分かる自動車などと違うところだ。

 他方、企業から研究費を獲得して“すぐれた成果”をあげたい研究者の側にも捏造への動機が働く。双方の思惑が一致すると、ノバルティスのような大問題に発展することになるわけだ。

いくつかの「抜け穴」
対象になる研究の範囲が曖昧

 しかし、臨床研究法にはいくつかの「抜け穴」があり、またこの法律ではカバーされていない臨床研究上の問題がある。