具体的に言えば、次のようなことだ。

 法律では、「特定臨床研究」の第一の定義として、「医薬品等製造販売業者及びその特殊関係者」によって「資金等」を提供された研究であることを挙げているが、この「特殊関係者」というのが、曖昧なことだ。

 この規定では、せいぜい子会社までしか含まないと解される可能性がある。

 従って、製薬会社が財団などを設立して、その財団から迂回する形で資金提供をしたり、あるいは、目的を特定しない「奨学寄附金」といった形で資金提供したりする場合、「特定臨床研究」と見なされず、規制の対象外となるかもしれない。

 法律では、「特定臨床研究」以外の一般的な臨床研究に関する記述もあるが、この研究については、厚労省の定める「臨床研究実施基準」に従って実施すべく努めるとする努力義務しか課されていない。

「特定臨床研究」の第二の定義で、未承認の医薬品は、製薬会社の直接の資金提供がなくても、「特定臨床研究」と見なされる。

 だが既に承認され、一般的に使用されている既成の医薬品については規制がない。

 既成のものは安全性が一応、確認されているからと、臨床試験を厳密に実施しなくてもいいというわけにはいかないはずだ。その薬の効果を他のものと比較したり、副作用の程度を測ったりすることが必要になることもある。 武田製薬やバイエル社の例がまさにこれに当たる。

 ほかにも「臨床研究法」は、規制の対象として想定していないものがある。

 経験のほとんどない医師が腹腔鏡手術を試みて患者を死亡させた、2002年の慈恵医大青戸病院事件のように、医師が先端医療の技術を身に付けるため独自に行う臨床研究もある。

 手術でなくても、抗がん剤のような重大な副作用を伴う薬品を使用する場合、未経験の医師が実施すると、“危険な人体実験”になってしまう。

 こうしたケースでは、被害の範囲は限定されるものの、(ほとんどの場合、医師の技能については十分なインフォームドコンセントもなく)被験者にされる個々の患者の被るリスクは極めて高い。