第4回では、ビジネスの成長に資するリスクマネジメントを実践するためには、成熟度モデルを用いた中長期的なロードマップを描き、スモールスタートによりクイックインを得ることが重要であると解説した。加えて、最新のGRCテクノロジーを導入する場合、そこに設計されたベストプラクティスを参考に、業務変革につなげていくことの重要性について述べた。本稿では、長期的なビジネスの成長を後押しするリスクマネジメントと統合管理モデルの実現について、調査結果や事例を交えて解説する。

リスクマネジメントの真の効果

 2015年にPwCが実施した「Risk in Review Survey」によると、リスク管理に先進的に取り組んでいる組織(以下、フロントライナー)とそうでない組織(以下、その他組織)を対象に、過去3年間の年間平均利益率を比較した結果、フロントライナーの方が平均して高い利益率をあげていることが分かった。

 2017年にPwCは、その調査結果の最新版を発表し、「その後2年間で利益率が向上した」との回答は、フロントライナーが59%、その他組織が51%、「収益の増加が見込まれる」との回答は、フロントライナーが77%、その他組織が71%であり、継続して高い利益率をあげていることが分かった。
出典:https://www.pwc.com/us/en/risk-assurance/risk-in-review-study.html

 その他の調査においても、例えばCFOを対象とした「FMグローバルホワイトペーパー(2017年発行)」によると、CFOの86%が「オペレーショナルリスクに厳格かつ効果的に取り組むことで、収益変動を減らすのに役立つ」と回答している。また共通するメッセージとして、「リスクマネジメントの改善は、経営陣と株主が望むビジネスの成長を促進する」と示唆している。