誰も望まぬ放送法改正を推し進める人々の「よくわからない理屈」政府の規制改革推進会議が検討している放送改革の内容に、批判が高まっている。そもそもこの改革、なぜ机上の空論だけで話が進んでいるのか(写真はイメージです)

間違いだらけの放送改革
放送法第4条の撤廃は本当に必要か?

 3月中旬に政府の規制改革推進会議が検討している放送改革の内容が報道されて以降、徐々にメディア上ではそれに対する批判が高まってきています。そこで今回は、2000年に政府のIT戦略本部で、そして2006年に総務大臣秘書官として放送改革を仕掛けた経験も踏まえ、今回の放送改革の中身はどう評価すべきかを考えてみたいと思います。

 放送改革に関する種々の報道から、放送改革として検討されている項目の主なポイントは以下の3つになると考えられます。

(1)放送法第4条の撤廃など、通信と放送で異なる規制・制度の一本化

(2)放送のソフト・ハード分離を徹底して、多様な制作事業者の参入を促進

(3)NHKは公共放送から公共メディアへ(NHKは適用除外)

 このうち、最も論争を呼ぶのは(1)の放送法第4条の撤廃でしょう。放送法第4条は、放送番組の編集に際して、公序良俗、政治的公平性、正確な報道、意見が対立する問題についての多角的な論点の提示、を求めています。つまり、放送法第4条を撤廃するということは、放送番組に公平性や中立性を求めず、米国のように放送局は特定の思想や立場に偏った番組をつくれるようになることを意味します。

 それでは、なぜ今のタイミングで放送法第4条の撤廃を検討しているのでしょうか。これも報道によると、規制改革推進会議は、「放送と通信の垣根のない新しいコンテンツ流通環境を実現する」ことを考えているようです。

 放送への新規参入の促進を狙っているのでしょうが、その目的がコンテンツ産業の活性化にあるならば、この理屈で放送法第4条を撤廃するというのは明らかに無理があります。

 というのは、電波は限りある資源なので、もちろんデジタル化によって同じ電波の帯域でもより多くの放送局の参入が可能になったとはいえ、新規参入の数にはかなり低い上限があることを考えると、数少ない新規参入で活性化というのは無理があります。米国がそうであるように、帯域が限られた放送電波よりも、無限に参入が可能であり、かつ非規制でもあるネットを活用した放送サービスへの新規参入の方がよっぽど現実的です。