東日本大震災で被災した自治体の復興のために、国が地方に手当てする「復興交付金」。その1回目の申請結果に、自治体側から早くもブーイングの嵐が巻き起こっている。
復興交付金とは、各自治体が独自の「復興プラン」を国に提示し、そのプランを国が審査して交付金を支給する新たな制度。阪神・淡路大震災の反省から、使い道の自由度が高い資金として用意されたことに加え、実質的に総額2兆円弱と規模も大きいことから、被災自治体は大きな期待を寄せていた。
しかし、復興庁が3月2日に発表した1回目の審査結果は、7県78市町村の申請総額約3900億円に対し、わずか6割の59市町村約2500億円しか認められなかった。
これには被災自治体も大反発、「復興庁ではなく査定庁だ」といった批判の声が上がった。
特に怒りを露わにしたのが宮城県。県全体では約57%しか認められず、“ゼロ回答”の市町村が3つもあったほど。それだけに村井嘉浩知事は6日、「配分内容も額も、納得がいかない」と平野達男復興相に抗議、改善要望書まで提出する始末だった。
ところが、である。よくよく中身を見てみると、こうした抗議は“筋違い”のようなのだ。じつは、宮城県だけでも申請を上回る金額が認められた市町が4つもあるのだ。
大崎市は申請額の218%と2倍以上が認められた。このほかにも多賀城市が137%、塩竈市は122%、南三陸町107%と、いずれも満額以上の回答だった。
というのも、国側は「復興プランが、トータルの街づくりという“面”で作られているかどうかを重視した」(復興庁の交付金担当者)。つまり、「道路1本だけ」「学校だけ」といった“点”での申請が、すべてはじかれていたわけだ。
例えば、災害公営住宅。新たな街づくりのプランをトータルで描いた上で計画されたものであれば、2011~12年度分しか申請していなくても、国は13年度分の予算まで前倒しで配分するなど、ちゃんとカネを付けたものもある。
そのため市町村側からは、「限りある財源のなかで、必要不可欠な部分は認めてくれた」(申請した自治体関係者)と、復興庁の姿勢を評価する声も決して少なくない。
今回は初回だったこともあって、「早い者勝ちの分捕り合戦になる」(自治体関係者)との誤解もあったようだが、今後、2回目、3回目の申請受付も予定されている。これに向けて、自治体も復興プランを再度練り直し、増税してひねり出した約2兆円の使い道を今一度しっかり考える必要がある。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 池田光史、小島健志)