厚生労働省のドタバタ劇は、いったいいつまで続くのか──。
崩壊する医療の立て直しを目指す地域医療再生基金の混乱は収まる様子もない。この基金は、医師の確保、急患センターの設置や検査機器の導入など、都道府県(各2エリア)がつくった再生プランに対して、国が50億円ずつ交付するもの。本来は、昨年12月中旬に有識者会議(6人)で各プランの審議を行なった後に交付額を内示・決定し、各自治体が基金条例を議決する段取りだった。
ところが、厚労省は昨年12月18日、有識者会議を開く前にいきなり交付額を内示する“反則技”を繰り出した。計画どおり1月中に交付決定するための苦肉の策である。医政局指導課は、役所の事情を楯にこう弁明する。
「補正予算の見直しの影響もあり、時間が足りない。内示を18日に出さないと、2月議会の議決にも間に合わない。1月下旬に有識者会議を開いて交付決定する」
そもそも厚労省には、各県の再生プランを事前審査する段階でもずさんさが目についた。5億円を超える事業でも、内訳金額と積算根拠が示されなくてもお咎めなし。事後検証のために設定する各事業の数値目標がないケースもあった。
指導課は、内示前に内訳金額や積算根拠のみならず、この数値目標についても「全県から取った」と明言したが、疑問は大いに残る。
内示後にある県を確認すると、高度なガン治療を行なう設備の導入は、他の設備のように「圏域内の入院治療の割合(50%)を県平均の70%まで引き上げる」といった数値目標がいっさいない。
1月下旬、わずか1回の有識者会議で審議をどう深めようというのか。再生基金が、すでにバラマキへと突き進んだことは確かだ。
(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 内村 敬)