一番問題なのは、自分には働いて行く上での価値基準がないという場合です。価値基準が定まっていないので、それを求めて転職するというような“ふわふわ”とした態度は最悪です。価値観が定まっていないなら、定まるまで今の職場にとどまるべしというのが、私の主張です。なぜなら、価値観が定まらないまでも、少なくとも現状の職場には適応しているわけで、適応できるかどうか未知数の会社に転職するよりも、はるかにリスクは小さいからです。また、少なくとも何らかの価値基準を現在の職場から吸収するくらい組織にコミットする必要があると考えるからでもあります。

人生、二毛作・三毛作の時代
永年勤務が非現実的なのも事実だが…

 以前、ある方に「昔のビジネスマン人生は一毛作だった。これからの時代は二毛作、いや、三毛作の時代だと思う」と聞かされました。私も全くその通りだと思っています。そもそも長寿時代となり、私たち1人ひとりの就業可能な期間も長期化しています。現時点でも、定年延長などもあって、65歳、70歳になっても元気に働いている方がたくさんいらっしゃいます。今現在、20代、30代であったなら、いったい何歳まで働くことができるのか?あるいは、働きたいか?

 こう考えると、私たちの仕事生活は実に長いものになるでしょうし、従来のように1つの仕事に生涯を掛けて取り組むという生き方よりも、二毛作・三毛作型の生き方が増えていくはずです。確かに、1つの職場に長期間就業し続けることが難しくなっていることも事実。社会の変化は激しく、技術の陳腐化速度も速まる一方です。そのような中、生き残り続けることは企業社会においてはとても困難なことであり、企業は長期の就業を保証できにくくなっています。

 こうした背景の中で、充実した二毛作・三毛作をどのように実現していくのか…。仮に今25歳だとして70歳まで45年間働くとします。大きく3つの仕事人生を過ごすとして、15年ずつ。二毛作だとして22.5年ずつです。果たして、今のような激しい人材流動・組織流動の流れに身を任せて、転職を繰り返し、これに対応することができるでしょうか?仮に2年ずつ転職を繰り返せば、私たちは22回転職しなければなりません。3年ずつでも15回転職になります。一人ひとりの人生を考えれば、さすがにこれでは充実を実現することは難しいのではないでしょうか。私が言うキャリアクライシスとは、実に単純な算数から来ているのです。