経営者や資産家でない限り、税理士とおつきあいのある人は少ないだろう。だが、そんな状況はこれから変わるかもしれない。財政難にあえぐ日本では、今後もいろいろな分野で増税の圧力がかかる。「たいした資産はないから相続税なんて私には関係ない」と思っていた人も、相続税を払わざるをえない事態になることは十分に予想される。そんなときに頼りになる税理士だが、「誰に頼んだらいいのかわからない」という声を聞く。現在、頼んでいる税理士に不満を感じている人もいる。
その一方で、「思うように顧客を増やせない」と嘆いている税理士も少なくない。情報が少ない納税者と、有効な宣伝手段を持たない税理士の間には、確実にギャップがある。このコーナーでは、過当競争に揺れる税理士業界の現状、自分に合った税理士の見つけ方、関心が高まっている相続や事業承継、知らないと損する優遇税制や最新の税制改正の動向などについて取り上げる。
第1回は、環境が様変わりする税理士業界の現状をレポートする。顧問料の価格破壊が続き、若い経営者を中心に税理士への選別志向が強まる。生き残る条件は何か。
公認会計士の就職難で
税理士への転身が加速
公認会計士(以下会計士)は無試験で税理士登録ができるが、それを廃止しようという動きがある。日本税理士会連合会(以下日税連)がとりまとめている税理士法改正要望案に、それが盛り込まれようとしているからだ。
以前から要望していることとはいえ、いまその動きに業界の注目が集まっているのは、最近、会計士の税理士業界への参入が増え、今後さらに加速するとみられているからだ。
その背景には、監査法人が採用を絞っていることがある。大企業の内部統制強化の動きをビジネスチャンスとみて、2007年から2008年にかけて社員を大量に採用した反動である。