縮小が続く米自動車市場の中で、じわじわとシェアを伸ばしている企業がある。米ビッグスリーの一角を占めるフォード・モーターだ。クライスラーに続き、ゼネラル・モーターズ(GM)の破綻シナリオまで現実味を増す中で、唯一、公的支援に頼らず経営再建を目指す同社の戦略と勝算を、北米部門社長のマーク・フィールズ氏に聞いた。
(聞き手/ジャーナリスト 桃田健史)
Photo (c) AP Images マーク・フィールズ氏は1998年、フォード傘下となったマツダに38歳の若さで社長として赴任。当時の日本メディアは、彼の動向を大きく取り上げた。今、マツダ関係者の多くはフィールズ氏を「ZoomZoomをマツダに残した男」と呼ぶ。自他共に認める「スポーツカー好き」。筆者とのインタビューの後、日産「370Z(フェアレディZ)」、GMシボレー「カマロ」、ダッジ「チャレンジャー」など、他社の各種広報車に、自らステアリングを握り、試乗していた。米ニュージャージ生まれ。ハーバードビジネススクール卒。 |
―北米市場の現状をどう見る?
昨年からの販売の落ち込みは、いまだに収まっていないというのが実感だ。だが、新築住宅着工件数の増加など、一般的な経済指標を見ている限り、米国の経済自体はそろそろ底打ち感が出始めたように思える。こうした社会情勢、つまりは経済の回復が自動車販売の回復につながることを、望むだけだ。
―クライスラーとGMはいま、非常に厳しい経営状況にある(クライスラーは4月30日に連邦破産法第11条適用を申請)。現時点で、この2社とフォードの経営姿勢で、最も違うところは何か。
ご承知の通り、我々は政府支援に頼らず、我々独自の経営方針を進めることが出来ている。そうしたなか、GM、クライスラーと最も違う点は、商品への投資を継続的に強めていることだ。フォードはいつも、顧客の立場で商品の企画開発を行っている。それが、他の2社との「大きな違い」だ。
実際、その効果は確実に現れている。米国市場でのシェアを月次で比較すると、過去6ヶ月中に計5回上昇している(このインタビューの後に公表された2009年4月分の実績を含めると、過去7ヶ月中に計6回上昇)。顧客は、フォードの商品をちゃんと支持してくれている。
―フォードはテキサス州を、かなり重要な市場として見ているようだが。
(テキサス州はフルサイズピックアップトラックの)F150の一大市場だ。我々にとってF150は最重要車種。その(派生型)新モデルのワールドプレミアは昨年、同州のダラスで開かれたモーターショーで行った。これからはF150だけでなく、乗用車とクロスオーバーにも力を入れていきたい。