普天間飛行場の移設問題で日米関係がもつれるなか、鳩山政権は移設先としてキャンプ・シュワブ陸上部を検討している。はたしてこの案は米国側に受け入れられるのか。もし鳩山政権がタイムリミットの5月までに移設先を決定できない場合、日米関係はどうなるのか。ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長などを務めたマイケル・グリーン氏に聞いた。(聞き手/ジャーナリスト 矢部武)

マイケル・グリーン
マイケル・グリーン
(Michael J. Green)
ワシントンにある米戦略国際問題研究所(CSIS)の日本部長。ジョージタウン大学国際関係学部准教授を兼務。ブッシュ前政権で国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長を務めた、米国を代表する知日派の一人。ジョンズ・ホプキンス大学にて国際関係論修士号、博士号を取得。フルブライト奨学生として東京大学大学院に留学。国会議員秘書など5年間の滞日経験をもち、日本語に堪能。
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―キャンプ・シュワブ陸上案は米国側に受け入れられるか?

 まず断っておかなければならないが、私はいま米国政府の仕事に携わっていないので、政府のために発言するわけではない。

 鳩山政権が提案しようとしている普天間飛行場のシュワブ移設案の詳しい内容は知らない。しかし、この案は以前にも日本側が提案し、米国側は慎重に検討した結果、海兵隊のオペレーション上の障害が大きすぎるということで拒否した。今回、米国政府がどう対応するかわからないが、過去の状況をふまえて考えると、難しいのではないかという印象だ。

―結局、辺野古案がベストということか。

 それが唯一の現実的な選択肢だと思う。外務省や防衛省はこの問題に15年も取り組み、沖縄の政治状況や海兵隊のオペレーション、アジアの軍事・政治などを考慮すれば辺野古案しかないことを知っている。日本政府が新たな移設先を提案すれば、米国側はいちおう話を聞くだろう。でも、従来案を修正するなど実現可能にするための最大限の努力をせずに、他の案を受け入れてくれと言っても難しい。

―名護市長選で反対派の候補が当選し、辺野古移設は難しくなったが。

 その通りだ。鳩山政権はこの選挙結果を尊重しなければならない。しかし、これは安全保障に関わる政策であり、最終的には中央政府が決定すべきだ。

 一つ言わせてもらえば、もし日本政府が在日米軍に出て行ってほしいと言えば、米軍は出ていくだろう。日本は主権国家なのだから。しかし、この15年間、日米両政府は沖縄の負担を減らすために交渉し、努力してきた。そして普天間飛行場を辺野古へ移せば沖縄住民の負担を著しく軽減でき、かつ戦略的にも意味があるということで同意したのである。

―米国側はいつまで我慢できるか?