喫煙者への風当たりは厳しさを増す一方だ。アイスランドではタバコの小売りを法律で禁じたうえ、「ニコチン依存症」の患者には医師の処方下でのみ、喫煙を許そうという動きまであるらしい。そこまで極端ではないが、日本でも喫煙者の肩身は狭い。新年度を機に禁煙を誓う方もおられるだろう。
日本の禁煙外来で処方される禁煙補助薬は、ニコチン代替療法に使うニコチンパッチと、脳内の報酬系(快感・幸福回路)にあるニコチン受容体の働きを調整する経口禁煙補助薬の「バレニクリン酒石酸塩(販売名・チャンピックス錠)」の二つ。禁煙成功率は2008年に承認されたバレニクリン酒石酸塩が上回るとされるが、抑うつ気分や焦燥感、気分の変動など精神症状の副作用が報告されているので、使用に際しては主治医とよく相談すること。海外では、この2剤のほか抗うつ薬も利用されている。
ただ、いったんは禁煙に成功しても、再喫煙率は高い。禁煙後の補助プログラムを受けない場合、1年後の再喫煙率は8割というデータもある。そこで究極の禁煙薬として期待されているのが米国で開発中の「禁煙ワクチン」だ。
開発レースの先頭を走る注射剤「NicVAX」は、ニコチンに結合する免疫抗体の産生を促す作用がある。体内に入ったニコチンに抗体が結合すると、脳の報酬系に到達できなくなってしまうのだ。喫煙者が執着する「あの爽快感」はまったく発生せず、吐き気やタールの不快感だけが残る。いわば、初めてタバコを吸ったときの気持ち悪さが喫煙のたびに繰り返されるワケ。依存行動も自然と消失する。