「当然、こうした活動は、丹呉さんたち先輩方の意向も受けたものだったと思います。香川さんたちはこの頃、若手でも見込みがありそうな人間は、どんどん野党の政治家に説明に行かせ、パイプを作らせていた。消費増税の必要性について、政策決定権のある国会議員に広く理解を求めることが一番の理由でした。ちょうど、国政に出馬したいけれど地盤や看板を持たない若手官僚が、財務省からも民主党の候補者として出始めていましたので、そういう人たちとの関係性を切らず、うまくつなぎ止め、また自民党から出馬する若手については、積極的に応援していました」と、当時を知る財務官僚は振り返る。

 こうした地道で、長きにわたる努力が実ったのが、2012年の自民・公明・民主党の3党合意による、「社会保障と税の一体改革」での消費増税10%への道筋合意だった。

安倍首相が就任直後から
経産省出身者を次々に抜擢

 ところが、いくら財務官僚たちがブレーンとして背後から力を貸しても、多くの民主党議員たちは権力の甘い蜜にふれておごり、次々と失態を犯していった。その政権運営の稚拙さに民心は離れ、その年の暮れ、再び自民党が政権を奪取し、圧倒的な強さで安倍晋三首相が誕生する。

 基本的に、財務官僚のみならず多くの霞が関官僚は、民主党と自民党なら、「自民党の方がもちろん自分たちの主義主張に合っているが、それはそれ。違う政党が政権に就いても、私見は横に置いてお仕えするのが自分たちの仕事」(前出の財務官僚)と割り切っている。

 もちろん香川が率いていた頃の財務省も、政権交代を見越し、野党時代の自民党とのパイプを切るようなことはしなかった。そして、2014年、消費税は8%に引き上げられる。だが、ここが最後の檜舞台だったのかもしれない。

 というのも安倍首相は、就任直後から経済産業省出身の官僚、今井尚哉氏を政務秘書官に大抜擢。その後、周辺を柳瀬唯夫・元事務秘書官ら、経産官僚で埋め尽くすようになっていく。前述したように、財務省も野党時代の自民党とのパイプは切らなかったが、安倍首相の復活はないと見てそれほど親交を深めていなかった。ここに財務省の最大の“誤算”があったと見られている。