性感染症のなかで患者数が最も多いのがクラミジア感染症。特に、妊婦がクラミジアに感染していると、流産や死産につながる恐れがあることが示唆されている。特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員で内科医の山本佳奈医師が、患者数が多い感染症にもかかわらず関心が低いクラミジア感染症について、警鐘を鳴らす。
「クラミジア感染症に、まさか自分がなるとは思っていかなった……」
数年ぶりに再会した友人が、「実はね」と言ってカミングアウトしてくれた。彼女は医師として働いている。ひどい月経痛に悩まされ、大学1年生の頃からずっと低用量ピルを内服していたこともあり、それ以外の避妊は特にしていなかったという。
性感染症に感染することはないだろうという思いこみから、性感染症の知識があるにも関わらず、検査に行くことはなかった。最近は、性感染症の対策の必要性すら、頭の中から抜けてしまっていたという。
幸い、彼女は初期症状を自覚した。性行後の出血を不思議に思っているうちに、急に我慢できないほどの下腹部痛が出現したのだ。おかしいなと思い、たまたま行った性感染症の検査結果を聞きがてら婦人科を受診したところ、なんとクラミジア陽性。パートナーも一緒に抗生剤を内服して治療しないことには、この疾患は完治しないことを知っていた彼女は、感染した理由に見覚えはなかったため、パートナーに陽性であったことを伝えた。抗生剤を内服し、陰性化はしたものの、不妊症になってしまったのではないか、と今も不安で仕方がないという。