翌日、井上部長は宮本課長を人事部に呼び出すと、単刀直入に名古屋へ主張した時のセクハラの件について聞いてみた。すると、宮本課長は驚いた様子を見せつつ、素直に認めた。

 「あの……佐々木さんと下着の色の話をしたのは事実です。ですが、そもそもその話を振ってきたのは、佐々木さんの方からなんです」
 「えっ、佐々木さんが!?」
 「そうなんですよ。『最近、夫が自分に興味を示してくれないから、派手な下着とかつけてみようかな』と冗談めかして言ってみたり、『課長、女性の下着は何色が好きですか?』などと聞いてきました」

 さらに、宮本課長は話を続ける。

 「『課長は奥さんと月に何回くらい夫婦生活があるんですか?』など聞いてきたので、まぁ、バカ話として話に乗りましたが……」
「それ以外に何かなかったか?ウエストを触ったとか…」と井上部長は尋ねる。

 図星を指されてうろたえた宮本課長は認めた。

 「ウエストを触りました。でも彼女が最初にふざけて運転中の私の脇腹をくすぐってきたので、『危ないからやめろよ』と冗談でくすぐり返したんです」
 「宮本さん、セクハラと言われても仕方ないんじゃないのかね?」
 「確かにうかつでした。まさか、この件でセクハラと言われているなんて……」

 宮本課長は明るい性格で社内でもムードメーカー的存在である。そんな宮本課長がセクハラをするとは俄かには信じられなかった井上部長は、宮本課長の話を信じることにした。

「嫌がっていなかった」は
理由にならない

 井上部長は、宮本課長の話をまみこの夫に電話で伝えた。すると夫は、

 「そんな一方的な話を信じて、なかったことにするのか?会社がそういう態度なら、私にも考えがある!」

 と怒りで声を震わせながら一方的に電話を切った。

 数日後、井上の元にまみこの夫から手紙が届いた。

宮本課長が仕事中に卑猥な発言を妻にしたことは事実であること、妻の身体に触れたことも事実であることから、セクハラと断言できる。相手が嫌がっていなかったというのは言い訳に過ぎない。上司である宮本さんに対して、妻は、本当は不快でも、それを表すことはできなかった。これをセクハラじゃないと御社が判断するなら、しかるべき場所で争うつもりだ。