今回は、既婚者でありながら、好みの女性社員が現れると自身の立場も顧みず口説きまくる専務のセクハラ問題。セクハラを理由に懲戒解雇の話を耳にするが、果たして本事例では専務が懲戒解雇となるのだろうか――?(社会保険労務士 木村政美)
創立10年の広告代理店。従業員数は50名。社長は40歳と若く、広告業界ではかなりのやり手として知られ、業績は好調。社内はラフな雰囲気だが、きちっとした労務管理がなされておらず、特に従業員間の秩序が保たれていない面がある。
<登場人物>
A専務:42歳の既婚者で専務取締役。「社長とツートップ」と呼ばれるほど仕事ができるキレ者。その仕事ぶりに社内はもとより顧客からの信頼も厚い。しかしお気に入りの女性社員が現れるとセクハラ三昧の性格に豹変!?
B社長:甲社の社長。40歳
C子:新入社員。A専務のお気に入りとなり、セクハラの標的となる
D社労士:B社長の大学時代の同級生で社労士
A氏はB社長が以前大手広告代理店で働いていた頃の先輩にあたる。2人は仕事の面で意気投合し、やがてB社長が会社を興すと専務取締役(以下、専務)になった。A専務の仕事に対する業績は申し分ないが、困ったことがあった。それは自分好みの女性社員が現れると、既婚者でありながら自身の立場も顧みず口説きまくってしまうのだ。
B社長はこの事実を承知している。なにせ前職の大手広告代理店社員時代からの性癖なのだから。もちろんこれまで幾度となく注意してきた。しかし、A専務に「お前、誰のおかげでここまでこれたと思ってるんだ?俺に忠告か?思い上がるなよ!」と凄まれ、何も言えなくなってしまった。