創業ブランドでさえ捨てる、ドトール・日レスが業態転換を繰り返す理由Photo by Yoshihisa Wada

多ブランド戦略で保険を掛ける

 株式投資のポートフォリオ理論を象徴する格言としてよく知られているものに、「卵を1つのカゴに盛るな」がある。つまり1つの銘柄に集中投資をするのではなく分散投資をしろ、というものだ。分散投資では、1つの銘柄の相場が下がっていても、他の銘柄が損失分を補てんしてくれ、総体的にリスクを減らせる。

 私の外食ビジネスも、まさにこれと同じ発想でやってきた。単一の業態、単一のブランドに集中して規模を大きくするのではなく、多くの業態、多くのブランドを展開して持続的な成長の基盤を創る。私は生意気にもこれを、「コングロマリット・チェーン・オペレーション・システム」と命名して、今なお堅持している。

 それは店舗展開についてだけではなく、ドトール・日レスグループ全体にも適用している。

 日本レストランシステム(日レス)の店舗では、和風スパゲティの「洋麺屋五右衛門」、オムレツの「卵と私」、自然食小売りの「F&F」、喫茶店の「星乃珈琲店」、さらに肉料理業態ではステーキの「神戸れんが亭」「黒毛和牛腰塚」、「牛たん焼き 仙台辺見」と全部で約40ブランドを展開している。

 一方、ドトールコーヒー(ドトール)の店舗では、「ドトールコーヒーショップ」「エクセルシオール カフェ」「カフェ コロラド」「カフェ レクセル」など7ブランドを展開している。

 さらにグループには、食材の仕入や加工、製造を行う多様な会社がある。青果物仕入の日本レストランベジ、食肉類仕入の日本レストランフーズ、ソース加工の日本レストランプロダクツ、ハムなどを製造する日本レストランハムソー、洋菓子製造のD&Nコンフェクショナリー、パン製造のサンメリー、希少なコーヒー豆と紅茶を輸入するプレミアムコーヒー&ティー等々といった具合だ。

 つまり日レスの店にしろ、ドトールの店にしろ、そこで提供される食材はグループ企業から一括して提供される垂直体制になっている。

 外食産業は本当に厳しい業界で、はやり廃りが早い。そうした中で、単一業態・単一ブランドに依存していては、食い合いが始まってしまい、おのずと限界が来る。

 ところが多業態・多ブランドであれば、不振業態が出てきても、他の業態が支えてくれている間に転換を進められるし、食材の仕入や加工会社も同じように注力先を変えることで、グループ経営の安定的な収益基盤となってくれる。