トイレの水アカと汚物汚れを同時に防ぐ難しさ、LIXILの苦節20年谷口慎介・LIXIL Water Technology Japan トイレ・洗面事業部 衛陶開発部 大便器開発グループ グループリーダー Photo by Mikio Usui/Studio Beans

 愛知県西部に位置する細長い知多半島の西岸にある常滑市は、平安時代の末期(12世紀末)から壺や甕(かめ)などの焼き物の産地として知られる。

 常滑市は、日本古来の伝統を引き継ぐ六古窯(ろっこよう)の一つに数えられ、今日でも窯業は常滑市を代表する産業だ。近年は、陶器製招き猫の日本一の生産地であることから、“とこにゃん”という巨大な猫のオブジェが観光客を迎える。

 この地に本社を構えていたのが旧INAX(現LIXILグループ)で、創業者の先祖である初代の伊奈長三(いな・ちょうざ)は、江戸時代中~後期の常滑焼を支えた陶工だった。

 時代は下って、大正時代に伊奈製陶所(後年のINAX)は、陶器製の土管や国産タイルのメーカーとして発足し、第2次世界大戦後に衛生陶器などの生産を開始する。常滑市にあるLIXIL榎戸工場は、その流れを汲む。

 榎戸工場は、東京ドームが約2個ぶん収まる広大な敷地内に、周辺地域に点在する部材5工場と連携する衛生陶器の中核工場があり、総合技術研究所などもある。

 工場内の照明は明るく、各種の産業用ロボットが忙しく立ち働く様子が見られるようになっている、世界に誇る最新鋭工場なのだ。