「貴重なお話、本当にありがとうございます」
「いいの、気にしないで。こちらこそありがとう。おやすみなさい」
「ごゆっくりお過ごしくださいませ。失礼いたします」

 それにしても本当にステキな人だ。最後までずっと笑顔だったな。

人の器量は笑顔に表れる

タイチ「さっきのお客さま、半端なく苦労している人なのに、笑顔がステキだったなぁ」

おじい「笑顔には器量が表れる」

タイチ「笑顔を見ていると、こちらまで気持ちが優しくなるよね」

おじい「タイチも、自然と相手から笑顔を引き出せる人間を目指せ」

タイチ「そうなりたいよ」

 でも、今は自分のことを「幸せ」だと思えないからな……。
 笑顔なんてホテルマンとして仕事のスイッチが入った時以外、なかなか作れない。

タイチ「でさ、奥村さまと話していて、気づいたことがあるんだ。
 これまでのボクは、おじいの住む非現実世界にばかり目が行っていて、現実世界のルールをおろそかにしていたな、って」

 おじいが深くうなずいた。

タイチ「前に、お金の流れも人であり、感情だって言っていたから、それも思い出してね。
 最近、人と人との関係の大切さを絶対に忘れてはいけないって強く思うから」

おじい「幸せの根っこは人間関係にある。ワシが住むあの世のことばかり考えていたり、お金のことばかり考えていると、幸せを逃すぞ」

タイチ「スピリチュアルなことだけでなく、お金のことも?」

おじい「幸せそうな人をよく観察していればわかる」