◆生涯、挑み続ける
◇クラシックと将棋の共通点

 加藤の趣味の一つはクラシック音楽だが、本格的に聴くようになったのは、前述の中原誠棋士との名人戦のときからである。名人戦の対局は1週間から10日程度の合間を置いて戦う。このため合間の時間の過ごし方が大切で、そのときにモーツァルトのレクイエム、バッハのマタイ受難曲などを聴くようになった。

 加藤は、クラシックの名曲と将棋の対局にはいくつもの共通点があるという。クラシックは一瞬一瞬にメロディが発展していく。将棋も一手ごとに盤面が変わっていく。その変化の面白さが共通点の一つだ。演奏の緊張感も、対局の緊張感に通じるという。

 音楽の趣味が高じて、オーケストラの指揮を経験し、歌手デビューも果たしており、これからもさまざまなことに挑戦したいという。

◇年齢の離れた棋士と対戦できる喜び

 将棋の素晴らしい点の一つとして、年齢の離れた相手とも対戦できる点がある。加藤は、2016年12月24日、藤井聡太四段のプロデビュー戦を戦った。藤井は14歳2カ月でプロになり、加藤の最年少記録(14歳7カ月)を抜いている。この点について、「悔しくありませんか?」と質問されることがあるが、加藤は、まったく思わないと答えているそうだ。

 自身が引退する直前に、藤井が出てきたことは朗報であり、将棋界がにぎやかになった。藤井の29連勝は、多くの人の想像を超えたもので、高く評価している。

◇家族への感謝とこれからの人生

 加藤は、私生活では4人の子どもに恵まれた。子どもの宿題にも本気で取り組み、たとえば、国語の宿題で言葉の意味を調べるときは、新聞社に電話をして聞いてみた。サトウキビの栽培について調べるときは沖縄の市役所に電話をして教えてもらった。クリスマスやお正月などの伝統行事も家族でお祝いするようにしている。