ただし、東南アジア各国の間で、レスカーへの移行に対する本気度には温度差がある。それは自動車メーカーへの配慮だ。経済成長を支える基幹産業である自動車産業で、国内に大規模な生産拠点や開発拠点がある場合、レスカー政策に対して慎重な対応が求められる。

 その点について、世界第3位の自動車大国(2017年:製造969万台、国内販売524万台)である日本としても、国によるレスカー政策、または自動車工業会や自動車メーカーそれぞれによるレスカー戦略を描くための本格的な議論が進んでいないのが実情だ。

モビリティサービス先進国はどこに?
公共交通再編だけではない新なる変革

 東南アジアでのレスカーのみならず、新しいモビリティ政策を進めている国や地域は世界各国に存在する。

 中でも最近目立つのが、北欧フィンランドだ。

 フィンランドは今年1月、「トランスポート・コード(交通に関する法律)」を施行。これによって、公共交通機関の走行データのオープンデータ化が義務化され、そのデータを活用するベンチャー企業の育成をフィンランド政府がバックアップしていく。

ITSアジアパシフィックフォーラムでのビジネスフィンランドの発表の様子ITSアジアパシフィックフォーラムでのビジネスフィンランドの発表の様子。同国にはモビリティサービス関連の企業が各種存在する Photo by Kenji Momota

 福岡でのITSアジアパシフィックフォーラムの翌週、都内ではフィンランド大使館商務部とあずさ監査法人が共同主催した「日本・フィンランド モビリティサービスセミナー」が行われた。

 講演では、フィンランド大使館商務部・商務参事官 ペッカ・ライティネン氏、経済産業省 製造産業局 自動車課 大臣官房参事官 小林大和氏、日本のジェトロに近い存在「ビジネスフィンランド」のプログラムディレクター、ミッコ・コスクエ氏、そしてフィンランドのモビリティサービス事業者MaaSグローバルなどと事業連携しているデンソーの常務役員 欧州技術担当 松ケ谷和沖氏らが登壇し、モビリティサービスに興味を持つ産学官関係者百数名に対して、フィンランドでの実例を紹介しながらビックデータを活用したモビリティサービスの可能性について熱く語った。

 100年に1度の大変革期。

 自動車産業界はいま、明らかに大きな曲がり角に立っている。

 レスカーを含めた新たなるモビリティサービスや政策について、今後もさらなる深堀り取材を続けていく。

(ジャーナリスト 桃田健史)