図らずも論文テーマとなった
機械学習と量子アニーリング

 この量子アニーリングを初めて提唱したのは、東京工業大学の西森秀稔教授と門脇正史博士だった。日本発の技術だ。1998年のことである。

 田中は東京工業大学に在学中、この西森研究室に籍を置いている。だが、このときは量子アニーリングには縁がなく、関心は別なところにあった。東京大学の博士課程でも、この領域の研究をメーンに据えてはいなかった。

 ところが、学位審査を終えて時間に余裕が生まれた中で、機械学習を研究していた友人と再会。「機械学習には量子アニーリングが使えそうで、面白そうだ」と話が盛り上がり、ひょんなことから研究のコラボレーションが始まった。

 これが翌2009年に、「量子アニーリングの機械学習への活用」をテーマとした友人との共同論文として実を結んだ。まだ機械学習という言葉がほとんど知られていなかった時代である。

 田中の顔の広さや人懐こさ、面白そうなテーマに飛び付くフットワークの軽さが“思わぬ収穫”をもたらした。

 実は、09年には、グーグルが当時まだ商用化されていなかった量子アニーリングマシンのD-Waveを念頭に置いた「機械学習の方法」を提案した論文を発表し、後に大きな注目を集めることになる。この論文には、くだんの田中たちの論文が引用されている。

企業とのコラボレーションで
発展途上の技術を磨いていく

 量子アニーリングマシンは世に出て、まだ10年もたっていない。カナダのベンチャー、D-Wave Systemsが11年に世界初の商用マシンを世に出し、その後、ほぼ2年サイクルのハードウエアの更新ごとに、量子ビットの個数は倍々ゲームで増えている。

 こうしたハードの進化はあるものの、量子アニーリングはまだ、確実に役に立つと言い切れる段階には至っていない。