要はJリーグからの退会を余儀なくされるわけで、現状の経営状況を見れば楽天ヴィッセル神戸株式会社がイニエスタの年俸を負担するのはほぼ不可能と言っていい。実際、イニエスタの獲得が間近と報じられた5月上旬には、ヴィッセルの強化担当を務める元日本代表MFの三浦淳寛スポーツディレクターが、年俸に対してこんな言葉を残している。

「正直、現実的ではない。金額を見てびっくりしました」

 イニエスタの入団会見では、今シーズンから掲出することが解禁された、ユニフォームの鎖骨部分へのスポンサーロゴとして2社が新たに決まったとアナウンスされた。デビューが近づいてくれば「広告料収入」も「入場料収入」も、さらにはユニフォームなどのグッズ販売の売り上げも大きく伸びてくるはずだが、それでも32億5000万円をまかなうことは至難の業となる。

32億5000万円は三木谷氏のポケットマネーから?
楽天の世界進出を拡大させるイニエスタの露出効果

 ここでヴィッセルの経営情報を振り返ってみる。Jリーグの公式ホームページでは2005年度以降の各クラブの決算が開示されているが、ヴィッセルは2013年度まで9年連続で単年度赤字および債務超過を続けていた。

 そして、クラブライセンス制度が厳格に適用された2014年度の「当期純利益」で一転して17億4600万円の黒字を計上。同時に「純資産」も1億2200万円となり、債務超過を解消させている。もっとも、2014年度の「経常利益」は4億6700万円の赤字だった。

 ここに22億5000万円にのぼる「特別利益」が加算された結果として「当期純利益」が黒字に転じ、債務超過状態からも脱出。Jリーグ退会という危機を回避することができた。この「特別利益」のほとんどが、ヴィッセルのオーナーを務める三木谷浩史氏(楽天株式会社代表取締役会長及び社長)による“ポケットマネー”だったとされている。

 ヴィッセルと、神戸出身で神戸に貢献したいという思いを常に抱いてきた三木谷氏の接点は2004年1月にさかのぼる。約42億円もの累計赤字を計上し、東京地方裁判所へ民事再生法の適用を申請していたヴィッセルの運営会社から、三木谷氏が設立した株式会社クリムゾンフットボールクラブが経営権を譲り受けた。

 倒産寸前だった生まれ故郷のJクラブを、日本でも有数の資産家として知られる三木谷氏が買収。チームカラーもそれまでの白と黒の縦ジマから、クリムゾンレッドと呼ばれる臙脂に変えた軌跡を踏まえながら、Jリーグ関係者は過去にこんな言葉を残したことがある。

「ヴィッセルさんの場合は、言い方は変なんですけれども、そもそも黒字とか赤字とかにあまりこだわっていない経営をしている。成り立ち自体が他の市民クラブとは違うと言いますか、足りないお金に対してはお財布がある、ということだと思いますので」