槙野が大きな成長を見せている
写真:JFA/アフロ

追いかけ続けてきた夢が、あとちょっと手を伸ばせば届くところにある。ガーナ代表を日産スタジアムに迎えた、30日のワールドカップ・ロシア大会への壮行試合。西野朗新監督(63)のもとで急きょ導入された3バックの左ストッパーとして先発した槙野智章(浦和レッズ)は、日本代表に名前を連ねながら8年前の南アフリカ大会、4年前のブラジル大会出場を逃してきた。31歳で迎えるロシア大会こそ必ず――ヴァイッド・ハリルホジッチ前監督に率いられた日本代表でも常連だったが、ベンチを温める機会が圧倒的に多かった男は昨秋以降で急成長を遂げ、ロシアの地に立とうとしている。その原動力は何度も挫折を味わい、ハリルホジッチ氏からは強烈なダメ出しを連発されながらも、すべてを成長への糧だと受け止めてきた究極のプラス思考にある。(ノンフィクションライター 藤江直人)

日本代表から遠ざかっていた槙野を
ハリル前監督は日本代表候補として招集

 日本代表におけるルーティーン通りに、槙野智章(浦和レッズ)はガーナ代表戦のキックオフを迎えた。本田圭佑(パチューカ)とともに先発した場合は、最後尾を本田に譲る形で、先頭のキャプテンから数えて10番目でピッチに入場してくる。

 レッズの場合は常に最後尾。その際は先頭に立つキャプテン、柏木陽介から順にハイタッチを、それも雄叫びを上げながら交わし、自身とチームに気合いを入れて所定の位置につく。聖なる儀式は代表でも変わらない。この日は先頭の長谷部誠(アイントラハト・フランクフルト)、川島永嗣(FCメス)と順にハイタッチを交わしながら、本田の前に入った。

 そして、手をつないで一緒に入ってくるエスコートキッズに笑顔で語りかける。6万人を超える大観衆を前にして緊張しないように。一生の思い出ができるように。将来はサッカー選手になりたいと思ってくれるように。未来を担う子どもたちへの思いやりは、レッズでも欠かしたことがない。

 しかし、約3時間後の取材エリアで、槙野は反省の弁を口にしている。前半開始を告げるホイッスルが鳴り響いてからわずか7分。ゴールほぼ正面、約18メートルの位置でファウルを犯してしまう。直接フリーキックを決められて先制を許し、0‐2の黒星を喫する序章を招いてしまった。

「ワールドカップ本大会を見すえれば、ああいう危険な位置でファウルしてはいけない。もう少し頭を使って、プレーしないといけない。個人的に反省するシーンでした」

 ゴール前で不要なファウルは犯さない――日本代表監督を電撃的に解任されたヴァイッド・ハリルホジッチ前監督から、何度も徹底された「3ヵ条」のひとつだった。

「マキノに何を言うかはもう考えてある。彼のための映像も、もう20日も前から用意してある。いいディスカッションができると思う」

 時は2015年5月。代表監督に就任して間もないハリルホジッチ氏が、過密スケジュールを承知の上で日本サッカー協会(JFA)及びJリーグに頼み込み、国内組だけを対象とした3日間の日本代表候補合宿を千葉県内で開催する直前に、待ち切れないとばかりに無邪気な笑顔を浮かべたことがある。

 唐突に名前を挙げられた槙野は、ハリルホジッチ氏が注目の初采配を振るった2015年3月のチュニジア代表との国際親善試合で、ザックジャパン時代の2013年9月以来、約1年半ぶりに日本代表へ復帰。吉田麻也(サウサンプトン)とセンターバックを組み、大分中銀ドームのピッチで先発フル出場を果たしていた。