そこで大切なのは相手を変えようとするのではなく、自分の対応法を変えることだ。

 叱責にしろ、注意にしろ、言いたいことを言ってこっちがスッキリし、相手をへこませるのが目的ではない。仕事のやり方を修正させることが本来の目的であるはずだ。

 そのためには責めるような口調にならないように細心の注意を払い、どこが良くないのか、どうしたらいいのかを冷静に伝えるように心がける。本人が納得できれば、行動の修正もスムーズに行われるはずだからだ。もし、雰囲気を見て、本人が納得していないようであれば、そうしなければならない理由も穏やかに説明する。

 自分も傷つきやすく、あれこれ気に病むタイプなら、相手の気持ちに配慮する習性が身についているが、自分があまり気にしないタイプだと、つい無神経な物言いをしてしまいがちなので、精神的にタフだと自認するタイプは特に注意しなくてはならない。

傷つきやすい心が持つ長所にも
目を向けさせることがカギ

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 また、傷つきやすい人の気持ちを萎縮させないためには、ただ気持ちに配慮してやんわり注意するだけでなく、その過敏さの長所にも目を向けさせることがカギとなる。どこに注目したらいいのか。それは、人の気持ちや立場に配慮した行動ができる点である。さらには、細かなことが気になるため、注意力が他の人よりも働く点である。そうした長所を意識させるようにすると、本人は気持ちが伸び伸びして、気分が前向きになりやすくなるため、こうした声がけが効果的である。

 そのようなアドバイスをA部長から受けたC課長は、Dさんに対してこんな声がけをしたのである。

「Dさんは繊細な心配りができるから安心だ」
「Dさんは他の人よりも注意力がある。きめ細かく丁寧な仕事をしてくれるから助かるよ」

 そのうちに、Dさんは少しずつ前向きになっていき、C課長の言葉を素直に受け止められるようになってきたという。

 A部長も、B君に対して同様の声がけを心がけた結果、B君も徐々に前向きになり、必要な注意はできるようになったという。

 いかがだろうか。こうした心理メカニズムを押さえて、気持ちをほぐすような声がけを心がけていけば、相手も胸襟を開いて話してくれるようになるし、こちらの意図も汲み取ってくれるようになる。もし皆さんの職場でも傷つきやすい人のことで悩んでいるようであれば、今回紹介したような声がけを取り入れてほしいと思う。

(心理学博士、MP人間科学研究所代表 榎本博明)