また、こんなこともありました。

 大学時代に私がやっとの思いでデートに誘った女性に対して、横浜のランドマークタワーの展望台から夜景を見ていた時のことです。

「ここから見えるあの街のネオンサインって、実はネオンじゃなくって、アルゴンだってこと知ってた?」

 沈黙がしばらく続いた後、その女性は「そろそろ終電の時間が……」と一言。とはいえ、時計を見るとまだ夜8時頃でした。
 
 このように相手に伝わらない説明で、失敗を数多く経験し、私は学びました。

「そうか、オレ自身がどんなに面白いと思っている話題でも、その人が興味のない話は、こっちがどんなに一所懸命説明してもわかってもらえないし、そもそも聴こうとさえしてくれないんだ……」

 どんなに一所懸命身につけた知識やスキルを駆使して話しても、相手がわかってくれなかったら、それは“ない”に等しいのです。

 相手が興味のない話やメリットのないことは、どんなにこっちが必死に説明しても届かないのです。そんな当たり前のことに、数多くの失敗から気づかされたのです。

その人の学力と
説明力は別次元のもの

 昨年まで、説明のプロとして予備校の教壇に立ち、東大や医学部を受験する生徒を教える立場になっていた私ですが、このように初めから説明力が優れていたわけではありません。

 予備校の時には化学を担当していましたが、自分が受験生の頃は偏差値36程度でした。そこから必死に受験勉強して偏差値70を突破できるような学力になったのですが、説明に関しては上述のような有り様……。

 つまり、自分の知識や理解度などの学力レベルが上がったからといって、説明そのものが上手くなるとは限らないのです。