「一流のビジネスパーソン」たちは、日々のビジネスの現場でどのように「ノート」を活用しているのか。『「いまの説明、わかりやすいね!」と言われるコツ』などのベストセラーを著したトヨタ自動車出身の浅田すぐる氏に、マッキンゼー出身で「一流のノート術」を研究する大嶋祥誉氏が、「トヨタで学んだノート術」について迫った。
ビジネス書を読んでも何も変わらない理由とは?
大嶋 「整理」「深掘り」「伝える」という思考のインプットとアウトプットのすべてが、浅田さんが実践されている「1枚にまとめる技術」に集約されていると思うのですが、そもそも「1枚にまとめる技術」「1枚フレームワーク」はどのような経緯で誕生したんですか?
浅田 ひと言で言うと、「行動化」のために作ったものです。
もともと私は読書が大好きで、ビジネス書もよく読むのですが、読んだ後に「それで、どうしようかな……」「何をしたらいいのかな……」と身動きがとれないことが結構あるんです。
大嶋 行動化できないということですね。
浅田 私にとってビジネス書の「良い、悪い」の基準は「行動に移せるかどうか」です。
それを私は「行動できない=動詞」と「行動できる=動作」という言葉で説明しているのですが、巷のビジネス書は「動詞」レベルのものが多く、たとえ理解できても実際には行動に移すことができません。
だから、私は物事をまとめるにしても、深掘りするにしても、伝えるにしても、どうやって「動作」レベルにするかを大切にしているんです。どのビジネス書の著者よりも、この点にはこだわって執筆しています。
大嶋 私は昔からビジネス書に限らず、あらゆるジャンルの本を読みあさる「本の虫」だったんですけど、特にビジネス書を読んで感じるのは「読むだけで終わってしまう」とか「複雑で、難しすぎて行動に落とし込めない本が多い」という感覚。
「物事の本質とは複雑ではなく、いたってシンプルだ」と思っているので、私にとって大切なのは「シンプルかどうか」「インスパイアされるかどうか」という視点。
もっと平たく言えば「ワクワクする」とか、「明日からやってみよう」と思える本かどうかです。
浅田 「自分にもできる」「明日からやってみよう」と思える感覚はすごく大事ですよね。そういう意味でも「1枚書くだけ」というシンプルさがとても大切で、多くの人に受け入れてもらえている要素だと思います。