認知症は軽度なら本格的発症を予防できる写真はイメージです

今年からアルツハイマー博士の生誕日である6月14日は「認知症予防の日」。認知症は発症前に「MCI(軽度認知障害)」という“予備軍”の状態がある。厚生労働省等の調査結果によると、MCIの人は潜在的に「65歳以上の4〜5人に1人」と言われている。認知症と診断される人を減らす取り組みが本格化してきた。(医療ジャーナリスト 福原麻希)

認知症全症例の35%に予防の可能性
予備軍の早期発見が鍵

 認知症にはいろいろな種類(アルツハイマー病・脳血管性認知症・レビ-小体型認知症等)があるが、昨年「認知症全症例の約35%が予防可能な要因により発症している」という試算(※1)が発表されたことは、あまり知られていない。

 その予防可能なリスクは(1)若年期(高校卒業以上)の教育、(2)中年期の生活習慣病の予防と管理(難聴・高血圧・肥満)、(3)高齢期の活動的なライフスタイル(喫煙・うつ病・運動不足・社会的孤立・糖尿病)という。

 前述のリスクの一つに挙げられた「難聴」は、ストレスや大きな音を聞き続けること、加齢等の要因で耳が聞こえにくい人は社会との関わりが希薄になりやすいため、認知症の発症につながりやすいとわかっている。

 さらに、認知症は診断される前から、脳内で変化が起こっている。例えば、認知症の中で一番多いアルツハイマー病の場合、約25年前から脳内に2種類のたんぱく質(アミロイドベータタンパク・タウタンパク)が蓄積していく。アルツハイマー病は75歳以降に診断される人が増えるが、実は50歳代からそれは始まっている。

 それから15年くらい経つと、認知症発症前の予備軍といえる「軽度認知障害」(MCI=Mild Cognitive Impairment)が始まる。MCIと診断される人に見られる代表的な出来事は、「料理や洗濯の手順がわからなくなる」「テレビのリモコンや電子レンジがうまく使えなくなる」「買い物や銀行でお金を引き出すことがうまくできない」などがある(「実行機能障害」と呼ばれる)。また、「約束を忘れる」「食事をしたことを忘れる(何を食べたかを忘れるのではない)」なども見られることがある(「エピソード記憶の低下」と呼ばれる)。

※1:Gill Livingston: transforming dementia prevention and care Rachael Davies< The Lancet,2017