世界最大の家電見本市CES(アメリカ・ラスベガス)で深セン企業の存在感は非常に大きく、昨年は652社が出展した。一方で実際に深センを訪れてもそれらの製品を効率的に見られるわけではない。深セン市政府と業界団体は、「中国国際消費展示電子交易中心(CEEC)」という巨大展示会場を建設した。が、役所が声を掛ければなんでもうまくいくとは限らない。(メイカーフェア深セン/シンガポール 高須正和)
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モデルはラスベガスの家電見本市
毎日「CES」が行われるような場所をつくろう

スマートフォンやコンピューターなどの情報家電、ドローンなどの新製品だけでなく、冷蔵庫や洗濯機といった白物家電でも中国企業の存在感は大きい。毎年1月にラスベガスで開かれる世界最大の家電見本市CES(Consumer Electronics Show)の3割が中国から、さらにその半数が深センからの出展だ。
ところがそうした企業を目当てに深センに訪れても、効率的に見られるわけではない。ドローンのDJIや情報機器のHuaweiなどは中国でも十分なシェアがあり、深セン市内に直営店があるが、いくつかのスタートアップはまず海外への販売を意図し、深センでは見られない製品も多い。本連載の第3回「深セン電気街の凄み、アキバやシリコンバレーを超える開発力」や第15回「深セン電気街で自社ブランド電機製品増殖中、中国なのにFacebookも駆使」などで再三紹介している世界最大の華強北電気街はあくまで部品の卸売りが中心で、最新家電がすべて見られる場所とは言えない。
1990年代に日本の秋葉原に学び、情報交換の場としてこの華強北電気街をつくった賽格電子集団(Shenzhen Electric Group:SEG)は、「毎日CESが行われるような場所を深センにつくろう」と計画しプロジェクトを始めた。このプロジェクトにはSEGのほか、政府系デベロッパーのShum Yip Land、そして福田区政府の投資ファンドが出資している。
CEEC(Consumer Electronics Exchange/Exhibition Center、中国国際消費展示交易中心)と名付けられたプロジェクトは、東京ディズニーリゾート全体よりも2割大きい120万平米の敷地「深上業城(Upper Hills)」にCEECの床面積だけで4万平米、商業施設と合わせると床面積20万平米を超える巨大なスペースを構え、R&D施設のための巨大な2つのビル、住人のためのアパートやホテルなどを備えた大規模なものだ。日本の無印良品ホテル(MUJI HOTEL)もここに入居し、すでにオープンしている。