ECBがついに量的緩和終了を発表
金融政策の行方はどうなるのか?
欧州中央銀行(ECB)は6月14日、今年4回目となる金融政策理事会を開催し、いわゆる量的緩和(QE)政策に相当する資産買い取りプログラム(APP)を年内で終了することを決定した。具体的には、ECBは9月まで月間300億ユーロの金融資産を購入し続けた後、10月以降はそれを月間150億ユーロに減らし、12月で打ち切るという方針だ。
ECBは15年1月にAPPの導入を決定し、3月から開始した。購入対象となる金融資産は、適格担保要件(BBB-格以上)から外れたギリシャを除くユーロ圏18ヵ国の国債がほとんどを占めており、さらに政府機関債(欧州投資銀行などの欧州連合の専門機関や各国の専門機関が発行する債券)が加わる。また高格付けの一部優良社債、債券担保付社債(カバードボンド)、資産担保証券(ABS)も買い取りの対象となっている。
そもそもECBは、日銀や米連銀(FRB)に比べてQEの導入に慎重であった。その背景には、購入対象資産となるユーロ圏各国の国債に信用格差が生じていたことがあった。とりわけ信用不安に陥っていたイタリアやスペインなどの国債を購入することは、中銀による所得移転につがなる側面があった。
しかしながら、原油価格の下落もあって欧州でデフレ懸念が高まったことを受け、ECBは15年1月にAPPの導入を決定せざるを得なくなった。
ECBはAPP導入後、比較的小刻みに政策を修正してきた。月次の資産購入額は当初600億ユーロであったが、16年4月には800億ユーロに増額された。景気が加速してきた17年4月には再び600億ユーロに減額され、さらに今年1月からは300億ユーロに減額された。現在のAPPは今年9月までとされていたが、景気拡大に伴い物価上昇が安定してきた中で、ECBは年内にもAPPを取り止めるという観測が、金融市場では高まっていた。
ECBは年明け以降、APP終了の影響を緩和する目的から、満期償還となった金融資産と同額分の金融資産を新たに購入(再投資)することになる。ECBが購入した国債の種類は多様であり、それぞれ平均残存期間や信用力も異なる。金融政策の正常化で先行するFRBでさえ再投資の縮小着手までに2年を費やしたが、ECBは資産構成が複雑なため、再投資の縮小着手までの時間がFRBよりも長くならざるを得ない見通しである。