成長と分配のバランスがとれた
フランス型の経済改革を期待

 供給側を重視するマクロン大統領の経済改革であるが、それ自体に目新しい内容があるわけでは決してない。むしろ歴代のフランスの政治家が試みては、有権者の反発を受けて挫折してきたオーソドックスな内容である。ただマクロン大統領が異なるのは、その推進を明言した上で当選し、当選後も強力なリーダーシップの下でそれを実行していることにある。就任1年目の政策運営は、相応の成果を上げたと評価できるだろう。引き続き改革に取り組んでいくことが望まれる。

 ところで、フランスが取り組もうとしている供給サイドを重視した経済改革の先駆者として、ドイツの経験は大きい。かつて「欧州の病人」とさえ揶揄されたドイツは、シュレーダー政権(1998~2005年)の下で供給サイドを重視した経済改革を行った。その結果、ドイツ経済は08年の金融危機以降もプラス成長を維持するなど、復調に成功した。後にスペインがラホイ政権(2011~18年)下で供給サイドを重視した経済改革を行い、一定の成功を収めたことも、供給サイドの改革の重要性を物語っている。

 フランスにとってのユーロ導入は、イタリアやスペインと同様に、実質的には通貨の切り上げを意味した。その結果、フランスは購買力を得た反面で、競争力を失った。足もとで競争力の差は縮小してきてはいるが、一段の改善を図るためには、供給サイドを重視した経済改革を行うことは必要不可欠となる。

 他方で、フランスはユーロ導入で得た購買力に加えて、その分配志向の強さに支えられた堅調な内需を有している。充実した社会政策もあり、合計特殊出生率は2ポイント近くとドイツやイタリアを引き離している。世界的に需要不足が叫ばれているが、とりわけ先進国で安定した内需を誇る国は少ない。この点はフランス経済の強力な強みである。

 フランスに求められているのは、確かに供給(成長)を重視した経済改革である。一方で、フランスの強みである需要(分配)をどのように活かすかという視点もまた重要だろう。そのためには、労働市場改革の観点から言えば、現状では後手に回っている職業訓練の充実といった北欧型の積極的就業政策を推し進める必要がある。税制改革で言えば、合理化や簡素化は必要であるものの、同時に一定の累進性を保って再配分機能を維持することが重要になる。

 成長と分配の最適なバランスの在り方を模索することは困難ではあるが、フランスでそうした経済改革が成功すれば、分配への要求が世界的に高まる中で、ドイツ以上に求心力を持つ経験になると期待される。

(三菱UFJリサーチ&コンサルティング 調査本部 研究員 土田陽介)