自分は何をすべきか。やっと見つけた答え
朝倉:そうした「複雑なものを複雑なままにマネージしたい」という思いがREAPRAでの活動につながるわけですね。
諸藤:そうです。投じる基礎スキルセットはエス・エム・エスで得たものの焼き直しですが、フィールドのN数を増やしていく。そして、ジェネレーションを繋いで、100年、200年と産業領域自体をガバナンスも含めて変えていくことを目指しています。
僕が50歳まで関わる10数年間は、産業領域のテーマをしぼり、リージョンは東南アジア。かつ、種銭と、確立した計画、足場を固めたリージョンをいくつか作って、財務的余力とビジネススキルを次の人に引き継いで渡そうと考えています。
朝倉:100億円をかけて、3年間で3億円の会社を30社作る計画と仰っていましたよね。
諸藤:当初はその計画だったのですが、実は今は、少し変わっています。
当初考えていた、30領域にそれぞれ1社ずつというのを、今は20領域くらいに減らして、代わりに、領域毎に入り口を1社に絞らず、5社から10社くらい作り、その中から1社が大きくなる、もしくは統合したりして、マーケットリーダーを作るほうがいいんじゃないかと考えています。
朝倉:経営には諸藤さんが、直接ハンズオンで関わっていくのですか?
諸藤:当初2年は様子見で何もせず、今年からはハンズオンサポートを開始しています。全てが産業を作ることの研究と実践なので、当初の10年は東南アジアワイドの会社をつくる研究実践として取り組んでいます。
行っていることとしては、プロミシング・インダストリー(有望な産業)を選ぶためのリサーチチームを作り、そのチームとディスカッションしながら、一般化した型を実践して作っています。このディスカッションを通して、ある産業領域の成長が確実ではないかと目星をつけると、具体的な事業テーマを話し、経営者を雇って事業化します。事業価値が高すぎない会社があれば資本参加もして、僕らもハンズオンしながら、型化していくということを、試行錯誤しながら進めています。
ただ、我々のハンズオンサポートの型には、日本の商習慣に則ったアナロジーが強固に入っているので、それをいきなり東南アジアに入れると、むしろマイナスの効果を出す可能性があります。なので、これからのフェーズでは様子見するのではなく、どんどん会社を作っていこうと考えています。
加えて、今までにも日本で個人的に手伝ってきた会社があるのですが、そこが東南アジアでの一般化に活用できる気がしてきたので、むしろ日本で時価総額1,000億円程度の事業会社を量産するという試みを型化し、それを並走させて、東南アジアにアダプトさせようと考えています。日本と東南アジアの2つで、並行して取り組むことによって、東南アジアのスケールノウハウを得やすくしようという考えです。
朝倉:個々の会社を経営する人材が数多く必要になると思いますが、経営者については、どういった人物像がREAPRAの目指す方向なのでしょうか?
諸藤:我々はハンズオンサポートの型を作る中で、理想的な経営者の要素を規定していて、それを経営者の採用、育成に活用しています。
会社の利益を上げていくために、あらゆる事象から施策を想起する力を「ビジネスアナロジー」と呼んでいて、そのアナロジーを高めるための行動を「コーゼーション」と「エフェクチュエーション」という二つの概念に分けています。
「コーゼーション」というのは、経営コンサルタントがやっているような、未来は予測・分析できるものという前提に立ち、分析的に何かを見つけるという力。「エフェクチュエーション」というのは、未来や市場は予測できず、作っていくものという前提に立ち、まず行動を起こして、その時に、周りの人を巻き込んで何かを作り出せる力です。
REAPRAがフォーカスしている領域で、新しい事業をゼロイチで立ち上げる経営者は、領域の複雑性が高いが故に、行動ファーストに動き、巻き込んだ人を通して機会を紡ぎ出すことが重要だと考えています。ある程度、キャリアを積んでいる人は決まった成功体験を元に行動を規定しているので、よりその行動がコーゼーションになりやすいと思っています。一方で、複雑性の高いマーケットでは、マーケットのインサイトもない状態で、行動を起こさずに分析的に事業機会を見つけることが極めて難しいのです。そういう観点から考えると、若い人が行動ファーストにまず事業を作り、事業が大きくなるにつれて、兼ね備えている知性を元に事後的に分析的なスキルを得ていくことが理想的だと考えており、今はそういう人材を求めています。
朝倉:今、目星を付けられている産業領域はありますか?
諸藤:東南アジアで言うと、例えばアビエーション(航空機産業)。別に飛行機を持つわけではなくて、航空機の二次流通だったり、航空人材の流動化だったりです。でも、最終的に全てを持つことができれば、コングロマリット化もできるのではないかと思っています。他には、農業×ITや教育などで、今14個くらいの事業を見ています。
日本のほうは、もうちょっとマーケティングリサーチをして、「確実にこれはやれるだろう」という領域を今考えているところです。