◆職場を飛び出す社員たち
◇地域とリゾートを共存共栄させる

 星野リゾートは2012年、沖縄の竹富島に「星のや竹富島」を開業した。竹富島の住民たちは、島の活性化に共に取り組むことを約束した星野リゾートを信じて開業に賛成したものの、着任したばかりのスタッフに対しては警戒心をもっていた。

 そんな中、島民の懐に飛び込んでいったのは、サービススタッフの田川氏だった。オフの時間を使い、草むしりを手伝ったり、島の運動会に参加したりした。やがて田川氏は、ホテルスタッフとしてよりも、島に魅せられた1人として島の人たちと付き合うようになっていった。

 田川氏が着目したのは、島最大の祭事である種子取祭だ。彼は、島民が大切に守り継いできたこの祭りを宿泊客に見てもらうことで、島の文化や伝統を肌で感じてもらえると考えたのだ。彼は、祭りの運営を手伝いつつ、島の人たちとの交渉に動き出した。

 島の人たちにとって、祭りは神事である。神事を観光としても成り立たせるために、厳密な調整が求められた。鑑賞ルールやタイミング、人数などを細かく調整し、田川氏が協力を求めると、島民の気持ちがだんだん傾きはじめていった。そうして、彼が集落に出かけるようになって3度目の秋には、星のや竹富島のオリジナル企画がスタートしたのだった。

 田川氏は、種子取祭だけでなく、島民との交流体験を次々とサービスに落とし込んでいった。彼は、星野リゾートが掲げる「日本を観光立国に」というミッションに共感し、その実現に向けて取り組んでいるのだ。

◇異文化を尊重しつつ、組織文化を根づかせる

 2017年1月、星野リゾートは海外初となる「星のや」をインドネシア・バリ島に開業した。星野代表は、バリ島でも、星野リゾートの強みを実践することにした。つまり、地域の人たちが考える地域の魅力をサービスに落とし込む方法だ。加えて、言葉だけでなく文化や価値観も違う土地においても、星野リゾートのおもてなしの考え方や手法、フラットな組織文化を浸透させていくことを決めた。

 サービスチームのUDとして現地に赴いたのが、小林氏だ。星野リゾートの組織文化を根づかせ、星野リゾート流のおもてなしとバリらしさを演出できるスタッフを育てることが、小林氏に託された使命であった。