「世帯分離こそが問題だ」
本質を主張し始めたメディア
2018年6月25日、厚労省は「生活保護受給世帯出身の大学生等の生活実態に関する調査・研究の結果」を公表した。実際の調査はインテージリサーチ社が約500万円で請け負った。
同日のニュースのタイトルを比べると、「生活保護世帯の大学受験、35%がアルバイトしながら受験勉強」(毎日放送/公開終了)、「生活保護世帯 厳しい現実 大学生 親の支援年5万円」(東京新聞)と、トーンも内容も大きく異なっていた。タイトルを見比べる限り、同じ結果を元にしているとは想像しにくい。
メディア各社は報道を重ね、大学進学を想定していない生活保護制度の問題点と過酷さにフォーカスした記事が徐々に目立ってきた。タイトルは「減額で6割、食費節約 進学後の『世帯分離』影響」(6月27日/毎日新聞)、「生活保護世帯の大学生、親から年5万円 自ら働いて生活」(6月30日、朝日新聞)と、極めて具体的だ。
7月2日付けの東京新聞には、「『世帯分離』貧困に拍車」という記事(無料ウェブ版なし)が掲載された。貧困問題に取り組み続けている白名正和記者によるものだ。
生活保護制度は大学進学を前提にしていないため、大学に進学した子どもは同一世帯内にいても世帯分離されて別世帯となり、生活保護の対象とならなくなる。記事は、世帯分離こそが問題の根源であることを、厚労省に調査・研究を促した大阪府堺市のケースワーカーたちの独自調査と共に示している。
さらに堺市の調査から、生活保護世帯から進学した大学生の「大学に入った途端、生活保護打ち切りはどうなのかと思う」という声を紹介し、「(世帯分離の見直しについて)現時点で、そういう話はない」という厚労省保護課の担当者と紙上で対話させている。