地震や水害など日本は自然災害が多い。被災によって自宅での生活が困難な場合、避難所暮らしを強いられることになるが、その場合、「愛するペットをどうすべきか」という難問が立ちはだかる。(医療ジャーナリスト 木原洋美)
大きな災害が起きるたび
ペットの避難が気になる
ペットを飼っている人の大半は、「ペットは子ども同然」「かけがえのない大切な家族」と思っている。世の中、空前の猫ブームが到来しているらしいから、こんなペット愛を理解してくれる人たちの方が、「理解できない派」よりも大勢を占めていると思いたい。
だが、たとえペット愛理解勢力でも、大災害時には「人間の生命が危うい時に、ペットなんかに構っている場合じゃない」となってしまうかもしれない。
2015年の9月に起きた常総大水害では、鬼怒川の堤防が決壊したことによって、今にも濁流に飲み込まれそうな民家の屋根に取り残された夫婦と柴犬2匹が、自衛隊のヘリコプターで一緒に吊り上げられ、共に救出される様子が日本中の注目を浴びた。
救出した自衛隊員には、称賛と同じくらい、批判の声が寄せられたという。ペットを家族と思っている人間にとっては、一緒に救出されるのは当然のことなのだが、逆に、苦々しく思う人もいる。
「税金使って、犬畜生なんか助けるんじゃない」と……。
筆者は、地域猫出身のメス猫と、先天性の疾患を持つオス犬を“家族”として迎え入れて同居している。彼らは完全な家族なので、動物だから、見殺しにしても構わないとは絶対に思えない。むしろ、人間社会に、動物の命を軽んじる風潮があるからこそ、(この子たちを守ってあげられるのは自分しかいない)という使命感で熱くなる。