たかが中華料理店の情報についての話でしょ、と思うことなかれ。中華料理はあくまで一つの例に過ぎない。

 中華料理は彼らの母国の料理であるだけに、非常にこだわりが強いが、その“中国人コミュニティー”の中で繰り広げられる独自情報に日本人がリーチすることは、けっこう難しいことなのだ。中国関係の仕事をしている人ならば、ウィーチャットを使っている可能性が高く、タイムラインにも中国人の友だちからの情報は流れてくるが、それはあくまでも一般的なもの。中国人同士はまた別のグループチャットをいくつも持っていて、そこに貴重な情報が流れてくる。

 つまり、東京都内にある中華料理店一つとってみても、中国人と日本人の情報網の“中身”や情報量には大きな格差がある、ということだ。

 ということは、それ以外の情報についても同様だといえる。

同じ日本でも
こんなに違う世界に生きている

 私は昨年末、ある中国人(60代の経営者)やその仲間の中国人たちに連れられて、銀座のある高級中華料理店に足を運んだ。在日中国人(特に高学歴の経営者クラス)の中では、知らない人はいないほど有名な店ということだったが、私はそれまでその店の存在を知らず、その日、初めてその店に行った。長い間、中国関係の仕事に就いている私だが、恥ずかしながら、その店名は聞いたことがなかった。

 オーナーシェフによると「雑居ビルの中なので、“いちげんさん”はまず来ないんですよ。場所がわかりにくいし、日本のマスコミでは宣伝していないですからね。中国人のウィーチャットでじわじわと店の噂が広まっていったんです」という。

 個人的には「都内でもイチオシ」と思えるほどおいしい店だと思ったが、その店名を周囲の“中国通”に話したところ、知っていると言った人はたった1人しかいなかった。