医師 「まずは現状がかなり厳しいということを理解してください」
双葉 「えっ?先生。そんな怖い顔しないでください」
医師 「幸野さんはステージ4の末期がんです。すい臓がんを原発巣として、既に全身への遠隔転移が見られます。肺、肝臓…、あと脳にも転移している疑いが…」

 このセリフが2時間超に及ぶ映画の前半10分程度で登場します。さらに、告知や説明を受けるのは本人だけではありません。やがて一浩も、医師から次の通り病状の説明を受けます。

「先月、検査した時、がんは既に複数の臓器に転移していて、手術も放射線治療も行えない状態で、抗がん剤を使ったとしても、正直効果はもう望めないと。奥さんには伝えてありますが、今後は緩和ケアを中心に考えて」

 一方、『生きる』では告知の場面がありません。『湯を沸かすほどの熱い愛』と同じく15分ぐらい過ぎた頃、胃がんの話が出てきます。胃に違和感を覚えた勘治が病院に行くと、おせっかいな患者から以下のように話しかけられます。

「胃ですか?私も胃が悪くってね。慢性というやつですな。近頃じゃもう胃が痛まないと生きてるような気がせんですよ。(注:呼び出された鈴木という患者を見つつ)あの男はね、胃潰瘍だと言われてるんですけどね。私のにらんだところでは胃がん、そのものズバリです。胃がんといやあもう死刑の宣告と同じことですからな。医者は大抵、軽い胃潰瘍だと言うんですよ。それからね『手術の必要はない』『食事もまああんまり不消化なものでない限り好きなものを食べてもいい』。こう言われたら長くって1年。もっともこういう自覚症状が出てきたら、とてもそりゃ1年は無理ですな」

 そして、「まず重いように痛む。何か気持ちの悪いゲップが盛んに上がってくる。舌が乾きましてね、水やお茶ばっかり欲しくなる。そして下痢をする。下痢をしない場合には反対に便秘する。黒い色をした大便が出る。それからね、あれだけ好きだった肉類が全然食えなくなる。何食っても30分ぐらいですぐに吐いてしまう。その時、1週間も前に食ったものが出てきたとしたら事ですよ。もうせいぜい三月(注:みつき)ぐらい…」