「冒険だが、やはりトレンドには乗りたい」。今夏を目指してCFD(差金決済取引)の取り扱いを準備中の、あるオンライン証券会社の関係者は言う。

 CFDは国内外の株式や株価指数、商品(コモディティ)価格などに連動するデリバティブ(金融派生商品)。FX(外国為替証拠金取引)の証券・商品版と考えればわかりやすい。この半年ほど、証券会社やFX会社、商品先物取引会社がCFDに相次ぎ参入。同時に対象(原資産)も競って拡大されており、オレンジジュースの先物までラインナップされるに至った。

 “ブーム”の背景の一つには、金融危機による各業者の厳しい経営環境がある。株価や投信の低迷を受け、証券会社がFXに次々と参入。さらに競争激化や規制強化でFX事業の収益性が低下した結果、“次の一手”としてCFDが注目を集めているのだ。

 投資家にとっては、海外の株式や商品先物に従来より手軽にアクセスでき、24時間取引などで利便性が上がる。反面でFXと同様、レバレッジをきかせた取引のためハイリスクである点には要注意だ。

 実際、CFD“発祥の地”英国や欧州では活況を呈する一方、米国では投資家保護の観点から個人のCFD取引は禁止されている。業者との相対取引であることから、当局の監視が行き届かないと危惧する向きもある。

 日本の場合さらに、証券は金融庁、商品先物は経済産業省および農林水産省と所管が異なることが、事態を複雑にしている。特に「商品CFDはグレーゾーン」だと、ある業者は困惑気味に明かす。

 今国会で審議中の金融商品取引法改正案では、顧客保護のため証券CFDでも証拠金の分別管理を義務化することが盛り込まれている。同時に商品取引所法の改正も審議されており、商品先物取引でも分離保管が義務化され、現状では参入規制のない海外商品先物の取引が許可制となる見込みだ。

 ところが証券会社やFX会社では、「デリバティブだから、金融商品取引業のライセンスがあればよい」と解釈し、すでに商品CFDの取り扱いを始めているところが少なくない。どちらの管轄になるのか不透明なまま、“実態”が先行しているかたちだ。

 金商法に服していれば実際は問題ないとの見方はあるが、今後は規制をめぐっての混乱もありうる。


(「週刊ダイヤモンド」編集部 河野拓郎)