1日平均250万回以上も商品の価格を改定・微調整!
ダイナミックプライシングの凄さとは?
実は、アメリカの人気アーティスト、テイラー・スウィフトは、直近のコンサートで、チケットに定価をもうけないダイナミックプライシングを採用しました。
本連載は、AIや仮想通貨に関する記事を掲載する場ですので、経済学的な話にはあまり踏み込みませんが、一言で言ってしまえば、ダイナミックプライシングとは、消費者の需要動向に応じて、AIが販売価格を調整する手法のことです。
このダイナミックプライシングは、少なくとも2013年には始まっており、アメリカのアマゾンは、当時すでに1日平均250万回以上も商品の価格を改定・微調整する技術を持っていました。
私は、義務教育で「価格は需要と供給のバランスによって決まる」と習いましたが、大学で経済学を専攻し、そんな単純なものではないことを知りました。
わかりやすい例で言えば、ビールの需要は、価格を下げなくても(むしろ価格を上げても)、暑い夏場になれば著しく増加します。
そして、スポーツ観戦のチケットや、アーティストのライブのチケットもビールと似たところがあります。
野球の場合、優勝が決まる一戦となれば、どれだけお金を積んででも観たいという人もいるでしょうし、逆に消化試合だったり、天候が雨だったりすれば、どれほどチケットが安くても完売は難しいかもしれません。
繰り返しになりますが、ライブチケットが発売即完売というのはアーティストにとっては最高の名誉ですが、これは興行主が価格設定を見誤ったと解釈することも可能です。
そもそも、即完売するほどの人気ライブのチケットであれば、完売までには時間は要しても、もっと高値で販売しても完売していた可能性が高いからです。
ちなみに、テイラー・スウィフトの場合、ダイナミックプライシングを導入したら、最高価格は3年前の225ドルから1500ドルに跳ね上がりました。
一方で、995ドルで販売されていた席は595ドルに下落しました(「ローリングストーン」4月9日、「ウォール・ストリート・ジャーナル」5月15日)。
このように価格が変動しても、興行主にとっては売上が(利益が)マキシマイズになればいいわけです。
私が知らなかっただけで、少なくとも2013年からあったダイナミックプライシングですが、ここに来て一気に注目を集めています。
それは、従来とは比較にならない大量かつ鮮度および精度の高い情報、すなわちビッグデータをAIが処理できるようになったからです。
そして、遅ればせながら、日本でもダイナミックプライシングに本格参入する動きが見られます。