三井物産とヤフーが手掛けるダイナミックプライシング!
狙いはズバリ、2020東京オリンピックなのか?

 2018年6月4日にとても興味深い記事が日本経済新聞電子版に踊りました。『チケット最適価格はAIに聞く 三井物産・ヤフー新会社』

 記事内容は、三井物産がヤフーなどと共同で、需要と供給に応じて価格を変える「ダイナミックプライシング」のサービス事業を始めるために新会社を設立したというものです。

 そして、スポーツ観戦のチケットなどで、AIを使って適正料金を探り、消費者は席がすいていれば安く購入でき、興行主は稼働率を高められるというメリットが強調されています。

 しかし、これは私見ですが、ダイナミックプライシングは本当に消費者にとってメリットばかりなのでしょうか。

 まず、チケットは「どれほど高くても観たい」という人が最初に飛びつくことは容易に想像がつきます。すなわち、需要が過熱しているわけですから、当然チケットの価格は上がります。

 誤解を恐れずに言えば、「金持ち優先」の販売方式のような気がしてなりません。

 また、ダイナミックプライシングによって転売行為がなくなるという楽観論もありますが、確かに転売屋の利ザヤは小さくなるかもしれませんが、発売と同時に手に入れたチケットは、恐らく、購入価格よりも高く転売することができるでしょう。

 そして、利ザヤが小さくなる分、薄利多売で、今まで以上に転売行為に拍車がかかる可能性すらあると思っています。

 ダイナミックプライシングは、確かに興行主にとってはいいことづくめです。
 しかし、こうした販売方式の成功の鍵は、「どれだけ消費者目線に立てるか」だと思っています。
 そして、そのためには、ビッグデータを消費者目線で解析し、適正な価格を提示できるAIが必要不可欠となります。

 また、このタイミングで三井物産とヤフーがダイナミックプライシング事業に参入してきた理由はなんでしょうか?

 私には、2020年の東京オリンピックを睨んだ動きにしか見えないのですが、これはもちろん私の想像の域を出ません。

 いずれにしても、AIが普及した2020年の世界を描いた拙書『マルチナ、永遠のAI。』が出版されてまだ3ヵ月ほどですが、このたった3ヵ月の動きを見ているだけでも、AIの進化や実体経済との連動の速さは私の予想をはるかに上回っています。

 私は、『マルチナ、永遠のAI。』で正確無比に2020年の世界を予見したつもりですが、実際にはどれほどの乖離が発生するのか。実現するAI技術はなにで、実現しないAI技術はなにで、予想を超えてしまうAI技術はなにか。

 こうした観点でお読みいただくと、より一層『マルチナ、永遠のAI。』をお楽しみいただけるかもしれません。

 さて、このAIは、「ディープラーニング」と呼ばれる自力学習をする「子どものAI」と、人が一から教えて丸暗記させる「大人のAI」に分かれます。
 同じAIといえども、両者でどれほどの違いが出るのかは、第1回連載の中で「子どものAI」であるGoogle翻訳と、「大人のAI」である別の翻訳サービスに同じ英文を日本語に翻訳させて、まったく異なる結果になるケースを紹介していますので、そちらを併せてお読みいただけたら幸いです。