液晶工場を建設するには、ガラス基板やカラーフィルターのほか、さまざまな部材を調達するサプライチェーンが必要になる。だが、米国ではそれが整備されていないため、液晶の量産に必要な部材は、日本やアジアから運び込まなければならず、コスト高になるのは明らかだ。

 特に最先端の第10.5世代の工場ともなれば、ガラス基板など主要部材のメーカーも同時に工場を建設するほどの大掛かりな準備が必要で、当初より専門家からは「米国で大型液晶工場など無理がある」とみられていた。

 昨年までに鴻海はウィスコンシン州政府から総額30億ドル(約3300億円)規模の補助プランを引き出すなど、計画は順調に進んでいるかに見えたが、「やはり難しいようだ」と液晶業界でささやかれ始めたのは今年5月ごろ。さらに、6月に入って鴻海幹部がウィスコンシン州の地元メディアのインタビューで「液晶工場は第6世代になる」と明らかにし、第10.5世代断念の方針が確認された。

 米国で大型液晶工場を建設する計画が「無謀」とされた理由は他にもある。すでに鴻海は、中国・広州に1兆円規模の第10.5世代の液晶パネル工場を建設中で、競合する中国液晶メーカーの京東方科技集団(BOE)や華星光電(CSOT)も相次いで第10.5世代工場を建設する計画を表明しており、大型液晶の供給過剰問題は深刻だ。

 こうした中で、韓国のLGディスプレー(LGD)は、韓国・坡州(パジュ)に建設する第10・5世代工場の液晶生産計画を凍結し、有機ELの製造に一本化する方針を固めている。ここで鴻海が、米国で第10.5世代工場の建設を強行するリスクは大きく、それを凍結するのは「当然の判断」(前出の液晶業界関係者)でもあった。