ちまたに流通している「ヘルスケア・アプリケーション(アプリ)」。モバイル機器をプラットフォームとして、日々の運動量や心拍数、食事内容などを記録し、生活習慣の改善やダイエットのモチベーションアップに役立てようというもの。さらに現在、こうしたヘルスケア・アプリとは一線を画す、医師による処方を必要とする日本初の「治療用アプリ」の臨床試験が進行中だ。外科的治療、薬物治療に続く“第3の治療”手段としての可能性と課題を取材した。(医学ライター 井手ゆきえ)

外科的治療、薬物治療に続く
第3の手段“治療用アプリ”の可能性

キュア・アップの治療用の禁煙アプリ
治療用の禁煙アプリのイメージ Photo:CureApp

“○○さんの血圧値と生活状況からすると、アプリBよりもアプリAの方がより血圧をコントロールできると思いますね。Aを処方しますので、購入サイトからダウンロードしてください。うまくいけば飲み薬を減らせるかもしれないので、続けてみましょう──。”

「近い将来、診察室でこんな会話が当たり前に交わされるようになります」というのは、株式会社キュア・アップの佐竹晃太代表取締役CEOだ。

 自身も呼吸器内科専門医である佐竹氏は、米国留学中の2011年に目にした1本の論文に衝撃を受けた。2型糖尿病について標準治療群と開発中の治療用アプリ群とで治療効果を比較した1年間のガチンコ勝負(ランダム化比較試験)の結果、過去数ヵ月間の血糖値を反映するHbA1c値において、治療用アプリ群が大きな差をつけて勝った、という内容だったのである(アプリ群−1.9% vs 標準治療群−0.7%)。

 試験参加者は全員が2型糖尿病と診断され、病歴の中央値は8年弱。しかもHbA1cの中央値は9.9%(6.5%以上から糖尿病型とされる)という血糖コントロール不良患者だ。ここまで血糖値が悪化すると、血糖降下剤の複数併用は当たり前。ところが厳格に血糖を下げると今度は副作用の低血糖発作が増えるという、医者も頭を抱えてしまう患者群である。

 しかし、その難しい患者群に対して、治療用アプリと医者とのコミュニケーションのみで標準治療を上回る治療効果が示されたのだ。薬がなければ、当然、副作用もない。俄然、「治療用アプリ」に興味が湧いた。